ケンコーコム(株)(東京都港区、後藤玄利社長)とウェルネット(神奈川県横浜市、尾藤昌道社長)が、医薬品のネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消を求めて提起した行政訴訟の控訴審判決が2012年4月26日、東京高裁で行われ、一審判決を取り消し、原告の主張を認める旨の判決が言い渡された。
三輪和雄裁判長から判決が読み上げられると、約3年にも及んだ裁判中、初めて原告側の表情が緩んだ。一審で敗訴後の控訴審が結審してから1年。判決まで異例の長さを費やし、蓄積された心労も一瞬でほぐれた。
一貫して国側の不当性を訴えていた原告側のケンコーコム後藤社長は、逆転勝訴に「勝って当然。3年以上異常な状態続いていたのだから国は上告せず、早期にこの問題に対処していただきたい」と話した。ウェルネット尾藤社長も「感無量であり、このたびの判決に感謝する」と率直に喜びを表した。原告側の阿部泰隆弁護士は「日本の司法には失望していたが、今日ばかりは晴れ晴れした気分」と当然の結果としながらも司法の判断に満足げな表情をみせた。
一般用医薬品のネット販売(を含む郵便等販売)を巡っては、厚生労働省令による制限で大幅に禁じられたことに対し、違憲であるなどとして、2009年5月にケンコーコムとウェルネットが国を相手取り行政訴訟を提起。一審では原告側が敗訴し、2010年4月に原告らが控訴していた。
その間、省令により、第一類、第二類医薬品の販売を規制された両社は、経営的にもダメージを受けた。今回の判決では、法律の委任によらず、国民の権利を制限する省令の規定であり、国家行政組織法12条3項に違反するとし、省令によるネット販売の制限は、行き過ぎとの判断が示された。
今後は国の動向次第だが、事実上、医薬品のネット販売を制限する省令は「死に体」であり、後藤社長は「販売がいままで通り可能になれば、これまで以上にネットによる医薬品販売の安全性を充実させるべく、最新のIT技術などを活用していきたい」と従来から訴えてきた医薬品のネット販売の安全性をさらに進化させ、医薬品の適正な入手ルートのひとつとして、その利便性向上に努める意向を示した。