(株)インターナショナルホームメディカル(東京都品川区 Tel 03-5435-8657)の機能性食品原料・酵素分解高麗人蔘エキスによる精巣機能障害の保護作用が、2014年学術誌「Experimental Gerontology(実験老年学)」に収載された。
高麗人蔘(オタネニンジン)の根は、韓国や中国、日本、他のアジア各国で最も用いられている伝統薬の1つ。各種疾患の治療にも幅広く用いられており、これまでにも高麗人参抽出物による抗炎症作用、抗糖尿病作用、抗腫瘍作用、神経保護作用、心臓保護作用、肝臓保護作用など、多様な生物活性を有することが報告されている。また、最近の研究では、円形脱毛症における毛髪再生の回復作用や、ヒトの角化細胞および皮膚線維芽細胞のUVB照射からの保護作用も有することが示されている。
さらに、高麗人蔘には古くから性機能に対する潜在的作用:勃起障害、老人性の精巣機能障害およびダイオキシンによる精巣損傷を回復する可能性が認められているが、その詳細な作用については未だ解明されていなかった。
今回の研究では、老齢ラットにおいて、精子形成に関する各種精巣機能と精巣蛋白質の組成に対する酵素分解高麗人蔘エキスの作用について、二次元電気泳動(2-DE)によるプロテオーム解析を用いて調べた。
対照である若齢ラット群と比較すると、老齢ラット群の精巣の精子数、セルトリ細胞数、胚細胞数は減少が認められたが、酵素分解高麗人蔘エキスを投与した老齢ラット(G-AR)群では上記指標の完全な回復が認められた。また、プロテオーム解析によって蒸留水を投与した老齢ラット(V-AR群)とG-AR群では、発現の仕方が異なるたんぱく質が14種同定された。中でも、GST(※1)およびPHGPx(※2)の発現は、V-AR群と比較してG-AR群で有意な上昇が認められ、それらの活性ならびにグルタチオン(※3)発現についても、G-AR群の精巣で上昇が認められた。さらに、過酸化脂質反応レベルは、若齢ラット群と比較して老齢ラット群で増加が認められたが、G-AR群ではこの差異に回復が認められた。
以上の結果から、酵素分解高麗人蔘エキスの投与によってPHGPxおよびGSTの活性が上昇してグルタチオンが増加することで、過酸化脂質反応が抑制されることによって精巣機能が増強されることが示唆された。
■ 参考 : 高麗人蔘の有効成分と酵素分解高麗人蔘エキス ■
高麗人蔘の薬理活性を担う主要な有効成分は、ジンセノサイドと呼ばれる高麗人参サポニンだが、このサポニンの真の薬理作用は人の腸管内における生体内変化によって生成された代謝物(コンパウンドK)」によるものである。コンパウンドKは高麗人蔘自体にはほとんど含まれておらず、ジンセノサイドが吸収される前に腸内細菌によって加水分解後に生成されるが、腸内細菌の状態は個人差が大きく、コンパウンドKが生成されにくい人は高麗人蔘の本来の効能を充分に得ることができないということが長年の課題であった。
酵素分解高麗人蔘エキスは酵素処理することで、腸内細菌に頼ることなくコンパウンドKを高濃度、かつ、安定的に摂取することが可能とした。現在、当該原料は高麗人蔘系製品の中で唯一MFDS(旧KFDA)個別認定型機能素材として認定され、韓国、米国、カナダ、ドイツでは用途特許(免疫系)も取得している。また、同原料は米国GRAS(Self-Affirmed GRAS)原料である。
現在計画中の研究としては、韓国における男性起因不妊改善個別認定型機能食品開発(SEVERANCE病院、建国大学等)である。
(※1)GST:グルタチオン-S-トランスフェラーゼmu5
生体内にて異物をグルタチオンに結合させる作用を持つ解毒酵素の一つ。
酸化ストレス及びNOストレスに対する細胞応答の過程で起きるタンパク質の反応において中心的な役割を果たす。
(※2)PHGPx:リン脂質ヒドロペルオキシド(PH)グルタチオン・ペルオキシダーゼ
精巣・精子に強く発現する抗酸化酵素。精巣・精子でのPHGPx発現低下が男性不妊症の原因であることが明らかとなっている。
(※3)グルタチオン
細胞内の主要な抗酸化成分。様々な毒物/薬物等の細胞外への排出や、抗酸化防御、放射線防護等の働きがある。