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IHM、鶏プラズマローゲン:構造の違いによる神経細胞への影響を確認

株式会社IHM(東京都品川区)が取り扱う機能性表示食品原料:Plasmax®(プラズマックス、丸大食品株式会社製:鶏ムネ肉由来プラズマローゲン)について、徳島大学との共同研究により、鶏プラズマローゲン独自の結合が脳の神経細胞を保護する可能性が示唆された。同件は集合開催が中止となった日本薬学会第140年会(2020年3月 京都)にて、「アラキドン酸による神経毒性作用を緩和する有効な生理活性脂質としてのプラズマローゲン種の同定」という表題で発表した。

プラズマローゲンは細胞膜の材料でもある複合脂質(リン脂質)の一種である。複合脂質の中でもグリセロール骨格の1位にビニルエーテル結合を含むグリセロリン脂質である。
プラズマローゲンは神経保護効果や神経炎症性疾患との関連性が指摘されている。また、体内プラズマローゲン量とアルツハイマー病などの重症度にも関連しているが、その詳細な作用メカニズムは明らかとなっていない。これらの神経変性疾患の原因としてアラキドン酸が挙げられるため、アラキドン酸により引き起こされる神経毒性に対してのプラズマローゲンの効果について解析し、有効な生理活性脂質としてのプラズマローゲン種を同定した。

<鶏プラズマローゲンの構造>
プラズマローゲンは、骨格の2位、3位に結合する物質が異なる様々な構造の分子種があり、由来する原料によってその存在割合が異なる。鶏プラズマローゲンの2位骨格にはオレイン酸とアラキドン酸、3位骨格にはコリンとエタノールアミンが含まれる。

<アラキドン酸添加による影響>
細胞にリン脂質を添加すると細胞膜に取り込まれる性質を利用し、ヒト由来の脳神経細胞にリン脂質無処理区をコントロールとし、2位骨格がオレイン酸、アラキドン酸、もしくはDHA、3位骨格がコリンのプラズマローゲンをそれぞれ添加して一定時間培養した。その後、さらにアラキドン酸を添加した後の細胞障害性の指標となるLDHの放出量と細胞内エネルギーを示すATP量を測定した。

無処理の細胞にアラキドン酸を添加すると細胞障害が起こるため、細胞外へのLDHの放出量が多く(細胞への障害が強く)なる。コントロールを1としたときの相対値により、2位骨格にオレイン酸が結合したプラズマローゲンはコントロールと比較し、細胞障害性を抑制した(P<0.05)。

一方で、DHA結合型はLDH放出量が増加していたが、アラキドン酸結合型については変化がなかった。

また、ATPは細胞への障害性が大きい程、細胞内での量が減少する。アラキドン酸を添加し6時間後のコントロール区割合を1としたときの相対値にて、2位骨格にオレイン酸が結合したプラズマローゲンは、コントロールと比較しエネルギー量が増加しており、ATP産生量の回復傾向が見られた。アラキドン酸結合型、DHA結合型については変化がみられなかった。

さらに、3位骨格がエタノールアミンのプラズマローゲンについても同様の評価を実施したが、LDH、ATPともにどちらのプラズマローゲン種にも変化がみられなかった。

<鶏由来プラズマローゲンの優位性:2位-オレイン酸、3位-コリン>
鶏由来プラズマローゲンの2位骨格に豊富に含まれているオレイン酸、及び3位骨格がコリン結合のプラズマローゲンは、細胞障害性の指標であるLDHを低下させ、細胞障害後は細胞内エネルギーであるATPを回復させた。2位骨格がアラキドン酸とDHAのプラズマローゲンは変化がみられなかった。
オレイン酸は鶏由来プラズマローゲンに豊富に結合している脂肪酸である。これまでは2位骨格にDHA、3位骨格にエタノールアミンを持つプラズマローゲンの優位性が訴求されることが多かったが、鶏由来のプラズマローゲンは、アラキドン酸添加による神経毒性を減弱させることから、DHAが結合したものよりも寧ろ脳の神経細胞を保護する有効な素材であると考えられる。

2020年10月19日 10:15