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伝統生薬「菊花」の解毒作用を解明

 ポーラ研究所は、菊花※1(Chrysanthemum morifolium の頭花)中の成分が、生体内の解毒物質であるグルタチオン※2の産生を高めることを発見しました。
 古来より菊は、人々の生活の中で、薬用、食用、観賞用の花として親しまれている植物です。日本では、天皇家の紋章であることから高貴な花とされ、中国では延命長寿の花としても知られています。
 薬用としての菊・菊花は、伝統的に解毒や解熱、消炎を目的に用いられています。刺身などと共に食用菊花が添えられる習慣があるのも、解毒の働きが知られるためといわれています。生体の解毒には体内の種々酵素群が関与していますが、菊花の解毒作用の詳細についてはいまだ明らかになっておりません。そこで今回、菊花の解毒作用を解明するために、菊花エキスがヒトの細胞中の生体内解毒物質のひとつであるグルタチオン量を増やすかどうかを調べました。
その結果、菊花には 細胞内グルタチオンの産生を高める作用があることを発見し
ました。また、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・波多野力教授との共同研究により、菊花中の有効成分がテトラクマロイルスペルミンという化合物であることをつきとめました。
 グルタチオンは動物、高等植物はもちろん、微生物、カビにまで広く分布し、細胞内の主要な抗酸化成分です。また、毒物などを細胞外に排出することで、細胞を内的・外的な環境の変化から守る役割を果たしています。
 したがって、菊花は生体内のグルタチオンの産生を高めることによって、解毒作用をもたらしていると考えられます。この研究成果は、9 月19 日から長崎にて開催される「日本生薬学会第55 回年会」にて報告予定です。
【菊花のグルタチオン産生促進作用とその有効成分】
 グルタチオン量は、ヒト肝ガン由来細胞株であるHepG2※3細胞を用いて測定しました。細胞に菊花エキスを添加して24 時間後の細胞内グルタチオン量は、コントロール(添加なし)の約2.5 倍に増加しました。
 さらに菊花エキス中の成分を単離精製し評価した結果、塩基性の物質であるテトラクマロイルスペルミンに強い活性が認められ、この化合物が活性成分のひとつであることを発見しました。
 なお、テトラクマロイルスペルミンはジャーマンカモミール(Matricariachamomilla)の花等から単離された報告はありますが、菊花の基原植物であるChrysanthemum 属植物からの単離報告は今回が初めてとなります。
菊花のグルタチオン産生促進作用とその有効成分
【様々な菊花のグルタチオン産生促進作用】
 中国・桂林市産菊花、日本市場品薬用菊花、食用菊のグルタチオン産生促進作用を測定したところ、中国・桂林市産菊花に最も高い作用があることがわかりました。桂林市産菊花にはテトラクマロイルスペルミンが多く含まれています。
 テトラクマロイルスペルミンを指標とすることで解毒作用の高い菊花の選別が可能になると考えられます。
様々な菊花のグルタチオン産生促進作用
※1:菊花
薬用に用いられる菊を「菊花」といい、頭花が小さく乾燥した状態で用いられます。一般的に、食用のものは花弁を大きく苦味を少なく改良されたもの、観賞用のものは頭花を大きく改良されたもので、「菊花」とは異なる種類の菊です。
※2:グルタチオン
3 つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)が結合したトリペプチドです。細胞内に 0.5窶驤 10 mMという比較的高濃度で存在し、細胞内の酸化還元状態を保つ(抗酸化)作用、毒物・薬物・伝達物質等を細胞外に排出する(解毒)作用等さまざまな生理機能を有しています。
※3:HepG2
ヒト肝ガン由来細胞株。細胞を用いた有効性試験によく用いられます。

2008年09月17日 15:57

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