独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
神戸大学大学院工学研究科
生活習慣病予防に効果のある機能性バイオプロダクトを効率良く生産。
微細藻類に適度なストレスを負荷して生産を促す。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、神戸大学大学院工学研究科の助教、勝田知尚氏は、活性酸素ストレスによる細胞生理の制御に基づいた機能性バイオプロダクト生産技術の開発をしました。
本技術は、藻類や植物の細胞が活性酸素ストレスに対する防御手段として産生する天然抗酸化物質を効率的に工業生産するため、細胞へ適度な活性酸素ストレスを簡便に負荷する手法であり、二酸化チタン触媒と超音波を利用する本技術により、近年、高い抗酸化作用からサプリメントとして注目されるアスタキサンチンの生産量が速度で約30%、収量で約10%向上することを実証しました。
機能性バイオプロダクトの工業的スケールにおける効率的な生産に向け、適切かつ簡便に活性酸素ストレスを負荷し、細胞生理を制御する技術であると共に、細胞の生理的変化を誘発する生育環境の変化が、一方では所望の生合成経路を抑制するといった、従来技術の問題点を解決するものと期待できます。
1.研究成果概要
カロテノイドやポリフェノール、アスタキサンチンなどの天然抗酸化物質は、生活習慣病予防に効果があるとして注目されていますが、こうした機能性バイオプロダクトは、元来、活性酸素ストレスへの防御手段として産出される物質であり、逆にこの点を利用し、天然抗酸化物質を生産する微細藻類に適度な活性酸素ストレスを負荷することで抗酸化物質の生産を促進することができます。本研究では、二酸化チタン竏鋳エ音波励起法の応用による微細藻類のヘマトコッカスにおけるアスタキサンチンの効率的誘導生産を目的とし、二酸化チタンを添加した培養液への超音波照射がヘマトコッカスの細胞生存率と活性酸素種生成に及ぼす影響を明らかにしました。
周波数42kHzと1MHzの超音波を照射する実験では、42kHzの超音波で照射音圧4.7kPaとしたとき20分間90%以上の細胞生存率を維持し、1MHz超音波では、数秒で細胞生存率が10%以下になるという結果を得ました。また、42kHz超音波では、超音波音圧に比例してヒドロキシルラジカル、ならびに過酸化水素といった活性酸素種の生成が増大することが分かりました。さらに、42kHz超音波照射下では、二酸化チタン添加量を増加すると活性酸素種生成が促進するが1MHz超音波照射下では抑制されること、および活性酸素種生成は二酸化チタンの表面積に依存することが分かりました。これらの結果から、42kHz、4.7kPaの超音波を15分程度照射するのが最も好適であり、ヘマトコッカスのアスタキサンチン生産量が向上することが示されました。
さらに、二酸化チタン竏鋳エ音波励起法における活性酸素種生成は、二酸化チタンと水媒体との固液界面に起因し、その表面積に比例するが、水媒体中を伝播する超音波と二酸化チタンを伝播する超音波との間に生じる位相差のために活性酸素種生成を抑制するということが分かりました。そこで、二酸化チタンの表面積を大きくとり、かつ活性酸素種生成の抑制を回避すべく、二酸化チタン充填物に微細格子(ハニカム)構造を付与し、その空隙方向に超音波を照射することで、位相差を生じさせないようにする方式を開発しました。
2.競合技術への強み
1) 簡便性:超音波は強弱の調節を容易に行うことができるため、本二酸化チタン竏鋳エ音波励起法は、活性酸素ストレスの負荷による細胞生理の制御を簡便に行えます。
2) 大型化が容易:超音波は細胞懸濁液中を低損失で透過できるため、機能性バイオプロダクトの生産装置を大型化するのも容易です。
3) 効率化が可能:二酸化チタン竏鋳エ音波励起法の応用による機能性バイオプロダクト生産の効率化に役立ちます。
3.今後の展望
微細藻類による機能性バイオプロダクト生産はこれまではほとんど海外で行われていましたが、最近になって、国内でも屋内型の培養設備によりヘマトコッカス細胞を集約的に培養し、アスタキサンチンを商業的に生産する企業が現れています。生活習慣病予防への関心の高まりを背景に、アスタキサンチン等機能性バイオプロダクトの国内生産に取り組む企業は増えていくものと思われます。今後、このような二酸化チタン-超音波励起法を応用した活性酸素ストレス負荷による細胞生理の制御技術の実用化に向け、企業・研究機関と本技術のライセンス供与を含めて意見交換を行う予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:神戸大学助教 勝田 知尚氏
活性酸素ストレスによる細胞生理の制御に基づいた機能性バイオプロダクト生産技術の開発
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