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お茶の香りの貯蔵メカニズムを解明/サントリー食品インターナショナル

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サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社と静岡大学学術院は、サントリー生命科学財団、山口大学、神戸大学と共同で、チャノキ(茶の木・Camellia sinensis)の香り成分を安定的に貯蔵する二糖配糖体「プリメベロシド」をつくり出す二つの酵素遺伝子を世界で初めて発見し、茶の香り成分を細胞内に貯蔵するメカニズムを明らかにしました。同研究の結果は、2015年6月1日に米国植物生物学会誌 Plant Physiology のオンライン版に掲載され、近日中に本誌にも掲載されます。

▼論文名
“Volatile glycosylation in tea plants: Sequential glycosylations for the biosynthesis of aroma β-primeverosides are catalyzed by two Camellia sinensis glycosyltransferases”
「チャノキにおける香気配糖体:二つの配糖体化酵素によって触媒される連続した配糖体化反応によって生み出される香気プリメベロシド」

▼共同研究グループについて
静岡大学 学術院 農学領域 大西利幸准教授と、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 小埜栄一郎研究員を中心に、サントリー生命科学財団、山口大学、神戸大学との共同研究として実施。

【研究の背景】
お茶は世界三大ノンアルコール飲料※1のひとつと言われ、緑茶、烏龍茶、紅茶がよく飲用されています(平成24年度:世界生産高390万トン、国内生産高8.5万トン※2)。香りはお茶の品質を決定付ける重要な要素です。香りのバラエティーが異なる緑茶、烏龍茶、紅茶は、すべてチャノキから製造されます。チャノキにおいて香り成分は二糖配糖体「プリメベロシド」の形で安定的に貯蔵されています。この配糖体に香りはなく、チャノキに内在する糖加水分解酵素によって配糖体が香り成分と糖部分に切断され、香り成分が遊離することにより香りを放ちます。緑茶、烏龍茶、紅茶それぞれの加工工程において糖加水分解酵素の働きが調節されることにより、バラエティーに富んだ香りのお茶がつくり出されます。しかし、チャノキにおいてプリメベロシドがどのようにつくられるかはわかりませんでした。そこで今回、プリメベロシドの生成過程に着目し、茶の香りの貯蔵メカニズムの解明に取り組みました。

【研究の内容】
1-1)
国産茶葉の主要品種であるヤブキタを用いて、茶葉で発現している遺伝子を網羅的に探索しました。その結果、香り成分に1つ目の糖(単糖のグルコース)を結合させると予想される配糖体化酵素遺伝子を見いだしました。

1-2)
1-1)で見出した遺伝子からタンパク質(酵素)をつくり出し、酵素活性を調べたところ、お茶の主要な香り成分に糖(グルコース)が結合し、グルコース配糖体「グルコシド」をつくる活性を確認することができました。そこでこの酵素を「CsGT1」と名付けました。(図1)

2-1)
チャノキの新鮮葉から酵素の精製を行い、2つ目の糖(単糖のキシロース)を結合させる酵素(タンパク質)を探索しました。その結果、香りのグルコシドに2つ目の糖(キシロース)を結合させて二糖配糖体「プリメベロシド」を生み出す活性を有するタンパク質を精製することができました。そこでこのタンパク質(酵素)を「CsGT2」と名付けました。(図2)

2-2)
2-1)のタンパク質のアミノ酸配列から次世代シークエンサーを使ってCsGT2の遺伝子配列を探索しました。候補の遺伝子配列のタンパク質を作りだし、香りのグルコシドと反応させたところ、2つ目の糖(キシロース)を結合させて香りのプリメベロシドをつくる活性を確認することができました。これによりCsGT2酵素の遺伝子を同定することができました。

3-1)
CsGT1とCsGT2の遺伝子は製茶に用いる若い新芽で活性化しており、新芽で香りの成分の蓄積が積極的に行われていることが推察されます。また遺伝子データベースを検索するとCsGT1とCsGT2とよく似た配列を持つ遺伝子はチャノキに限らず多くの植物で認められるため、二つの配糖体化酵素による香気成分の貯蔵機構は植物に広く備わっていると予想されます。

以上の研究により、チャノキの香り成分を安定的に貯蔵する二糖配糖体「プリメベロシド」をつくり出す二つの配糖体酵素の遺伝子が特定され、茶の香り成分を細胞内に貯蔵するメカニズムが明らかになりました。

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【今後の期待】
茶の香り成分の貯蔵メカニズムが明らかになったことにより、
(1)本研究で発見した2つの配糖体化酵素「CsGT1」と「CsGT2」が強く働いている茶品種や特定の部位を見つけ出すことで、香り成分のバラエティーや強弱の異なる茶製品の開発が期待されます。

(2)「CsGT1」や「CsGT2」の働く時期や部位を詳細に調べることで、お茶を製造するための刈り入れのタイミングや部位を見極めることができるため、香りを引き出す新しい茶葉加工技術の開発が期待されます。

(3)香りに注目した新たな茶品種を開発する際に、「CsGT1」や「CsGT2」が指標(遺伝子マーカー)のひとつとして役立つことが期待されます。

サントリー食品インターナショナル株式会社は、今後もサントリーグローバルイノベーションセンター株式会社と連携し、本研究成果を飲料・食品の製造、販売事業の分野の付加価値創造に活用していきます。

※1世界三大ノンアルコール飲料:コーヒー・茶・ココア
※2国際連合食糧農業機関の発表データ:FAOSTAT(Food and Agriculture Organization Corporate Statistical Database)

※詳細は下記URLをご参照下さい
◎サントリー食品インターナショナル株式会社 2015年6月1日発表
http://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/d/sbf0297.html

◎サントリーグローバルイノベーションセンターホームページ
http://www.suntory.co.jp/sic/

◎サントリー食品インターナショナルホームページ
http://suntory.jp/sbf/

2015年06月02日 10:30

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