三菱樹脂株式会社および株式会社グリーンイノベーションは、2009年より甘草の国内栽培技術の共同開発を進めておりますが、今般、両社が開発した技術により、第16改正日本薬局方基準が定めたグリチルリチン酸含量2.5%以上を満たす、医薬品原材料として使用可能な、国内での甘草の量産化に一定の目途がたちました。
薬用植物(薬草)は、甘草、シャクヤク、ウコン、桂皮などを中心に、主として、漢方薬や食品、健康食品、化粧品などの幅広い分野で原材料として利用されています。一方で、甘草などの薬草の生産国では、野生品の乱獲が問題となり、薬用植物資源保護の観点から採取制限が実施される動きがあるため、消費国においては薬草の安定確保が大きな課題となってきています。中でも、漢方薬の約7割に使用されている甘草は、その殆どが野生品であり、かつ、すべてを海外からの輸入に頼っていることから、国内での栽培が急務となってきていますが、原産地との気候風土の違いや、栽培技術が未だ確立されていないことから、国内での人工栽培は難しいとされていました。
このような状況の中、両社は以下の3項目を目標として開発を進めてきました。
1)畑作に適した甘草苗の生産条件の確立
・人工光閉鎖型苗生産設備での甘草苗生産最適条件の確立
2)畑作での甘草栽培技術の確立
・全国各地での実証栽培を通じての栽培適地の見極めと、定植前作業、施肥条件、複数年にわたる栽培管理技術、収穫作業の機械化、収穫物の切断・乾燥技術などの確立
3)優良株の選抜と増殖技術の確立
・実証栽培の中で選抜された優良株、病気に強い株などを、人工光閉鎖型苗生産設備の養生機能(人工的に高湿度を保たれた空間で、効率的な養生を行う機能)を活用して大量増殖させる方法や、増殖株による再選抜の繰り返し
今回、足かけ6年におよぶ様々な試験栽培と、全国各地(北海道~沖縄までの30数か所)での実証栽培の結果、目標の上記3項目を確立することができました。実績として、2014年秋の収穫物に関しては、第16改正日本薬局方基準(グリチルリチン酸含量2.5%以上)を満たす、収穫物全体の平均含量で2.8%を達成し、医薬品原材料として国産甘草が利用できる可能性を示しました。定植の機械化など、未解決の問題はあるものの、最大の課題であるグリチルリチン酸含有量の富化に目途がたったことにより、今後の全国ベースでの栽培拡大による量産化が期待されるところです。
今後の国内での栽培が順調に進展して行けば、現在、調達のほとんどすべてを海外に依存している生薬甘草の一部を国産甘草で代替できる可能性が開けると同時に、食品添加物・健康食品・化粧品等々においても、原材料として国産甘草が使われる機会が増えて行くものと思われます。今回の成果をもとに、両社は日本国内の自給率を高めるための定植地拡大を、国および地方自治体に積極的に働きかけるとともに、日本国内での量産化に向けたビジネスモデルの構築を進めます。
※詳細は下記URLをご参照下さい
◎三菱樹脂株式会社 2015年7月15日発表
http://www.mpi.co.jp/news/201507150790.html
◎三菱樹脂株式会社 公式サイト
http://www.mpi.co.jp/
◎株式会社グリーンイノベーション 公式サイト
http://www.g-innovation.co.jp/