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非天然化合物の人工生合成手法「メタボリック・フィルタリング」を開発/千葉大

JST 戦略的創造研究推進事業において、千葉大学の梅野 太輔 准教授らは、合成生物学と酵素の進化分子工学注2)の技術を用いて新しい代謝経路構築の方法論を開発し、非天然アスタキサンチン注3)を生産する人工生合成経路の構築に成功しました。

近年、医薬品や工業用化学物質など、自然界に存在しない有用物質(非天然化合物)を生物内で合成させる人工生合成経路の構築が望まれています。非天然化合物を作るには、天然には存在しない酵素反応ステップが必要です。酵素工学の進歩により、既存の酵素に新たな酵素活性を持たせることは可能になりつつありますが、その新しい活性のみを選択的に触媒する酵素(特異的な酵素)を作ることは、はるかに困難な課題です。

人工の酵素活性が十分に特異的でない場合、それらをいくつも組み合わせて長い人工生合成経路を構築すると、各ステップで副産物への経路が生じるため実用化が困難です。梅野准教授らは、非特異的な酵素活性の「重ね合わせ」の妙によって経路全体の選択性を作り出す「メタボリック・フィルタリング」という手法を考案し、その有効性を実証しました。高い抗酸化作用を持つ非天然化合物であるC50アスタキサンチンを生合成するため、全15ステップの人工経路をデザインしました。しかし、人為的に改変した酵素を共発現させただけでは、大量の副産物が得られただけで、目的のC50アスタキサンチンは検出さえできませんでした。そこで、人工生合成経路の上流と下流で、ある酵素の生産物選択性と次のステップの基質選択性が「部分的に」重なるように組み合わせることを試みました。すると、特異性の低い酵素だけからなるにもかかわらず、95%もの選択性でC50アスタキサンチンを作る人工生合成経路を構築できました。

同研究成果は、さまざまな人工生合成経路に応用することが可能であり、これまで不可能だった非天然化合物の産生に貢献することが期待されます。同研究は、千葉大学の古林 真衣子 大学院生(現 MIT研究員)、日本医科大学の高市 真一 准教授、生産開発科学研究所の眞岡 孝至 博士、名古屋大学の邊見 久 准教授らと共同で行ったものです。同研究成果は、2015年7月14日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版で公開されました。

※詳細は下記URLをご参照下さい
◎国立大学法人 千葉大学 2015年7月15日
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/pdf/2015/20150715_1.pdf

◎国立大学法人 千葉大学 公式サイト
http://www.chiba-u.ac.jp/

◎国立研究開発法人科学技術振興機構法(JST)
公式サイト
http://www.jst.go.jp/

2015年07月21日 10:26

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