タカナシ乳業株式会社は、クリスチャンハンセン社とライセンス契約をしているプロバイオティクス乳酸菌である「Lactobacillus rhamnosus GG 株 (ラクトバチルスラムノーサス GG 株)」の摂取が、肌の状態を改善させ、腸内細菌叢に影響を及ぼすことを確認しました。これらに関する最新の研究結果を 3 月に開催された日本農芸化学会 2018 年度大会(3 月 15~18 日:名城大学)で発表しました。
【最新結果のまとめ】
Lactobacillus rhamnosus GG 株摂取により、肌の角層水分量が高まり、肌状態の改善がみられた。また、糞便中から抽出した DNA を用いて腸内細菌叢を解析した結果、Proteobacteria 門に属する細菌が Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取により減少した。
【背景・目的】
近年、若い女性を中心にダイエットなどの過度な食事制限により、必要な栄養素が摂取できていない場合が多くみられます。肌の状態は外的要因だけでなく、食生活も関連しています。
さらに、運動不足やストレスのような現代社会の生活環境や健康、精神状態もまた、肌と密接に関係を持つと言われています。このような状況下で、肌の状態を向上するためには、外部からのスキンケア以外に、様々な食品の摂取により体の中から肌の健康を保つことも重要だと考えられます。
特に、腸内環境の悪化、つまり便秘状態は肌の状態を悪化させることが一般的に知られております。我々も、プロバイオティクスである Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取による、投与前後試験を実施したところ、女性の便秘の改善および肌の状態を改善する可能性が示唆されました(日本乳酸菌学会誌 28(1):12-17,2017)。同研究では、女性だけでなく男性も含め本乳酸菌による腸内環境および肌状態への影響をさらに検討しました。
【結果(1)Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取が肌の状態に及ぼす影響】
1 週間の排便回数が 3~5 回で便秘を自覚しており、肌の乾燥や肌荒れが気になる健常な成人を対象としました。試験の参加者を、Lactobacillus rhamnosus GG 群とプラセボ 1)群の 2 群に分け、二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験 2)を実施しました。
1 日 1 回、乳酸菌を摂取する群は該当菌を 140 億個含む顆粒状の食品を、プラセボ群は乳酸菌を含まない顆粒状の食品をそれぞれ摂取しました。試験前と試験 4 週後に肌(頬と前腕部)の角層水分量と経表皮水分蒸散量を機器計測により測定しました。
試験 4 週後に本乳酸菌摂取により、前腕部の角層水分量がプラセボ群と比べて有意に高まりました。また、頬の経表皮水分蒸散量が乳酸菌を摂取する群のみ試験後で試験前と比べて有意に抑制されました。肌にとって水分保持は非常に重要であり、肌の保湿に寄与しています。水分量の減少は、肌のバリア機能を低下させ、乾燥、肌荒れなどの肌トラブルを引き起こします。これらの結果より、Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取により、肌の状態を改善することが示唆されました。
【結果(2) Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取が健常成人の腸内細菌叢に及ぼす影響】
試験前(0 週目)と試験後(4 週目)に糞便サンプルを採取(Lactobacillus rhamnosus GG 群 45 名、プラセボ群 44 名)し、DNA を抽出しました。その後次世代シーケンサー3)を用いて腸内細菌を解析し、同乳酸菌の摂取が健常成人の腸内細菌に与える影響を詳細に検討しました。
腸内細菌の占有率(腸内細菌全体のうち占めている割合)を見てみると、本乳酸菌を摂取することで Proteobacteria 門に属する細菌が統計学的に有意に減少することがわかりました。
近年、腸内細菌と健康および種々の疾病の間には密接な関わりがあることが報告されており、Proteobacteria 門は炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、大腸癌、2 型糖尿病や肥満などで高 い割 合 を示 す こ とが報 告 されていま す。
今 回 の試 験 に よ り 、健 康 な日 本 人 が Lactobacillusrhamnosus GG 株を摂取することで、腸内細菌叢を変動させることが初めて明らかになりました。今後は、これらの腸内細菌叢の変動と肌の状態の改善との関係性を明らかにし、皆様の健康に寄与できるよう取り組んでいきます。
【Lactobacillus rhamnosus GG 株(ラクトバチルス ラムノーサス GG 株)】 ヒト腸内から分離された乳酸菌で、胃酸・胆汁酸に対して耐性があり、整腸作用の効果が報告されています。また、抗アレルギー作用についての研究が盛んにおこなわれており、近年、北欧で行われた臨床試験で小児のアトピー性皮膚炎の発症予防効果が報告されています。
1) プラセボ:有効成分を含まない試験食品。
2) 二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験:Lactobacillus rhamnosus GG 群とプラセボ群の 2 群に分け、試験者も試験参加者もどちらを摂取しているかわからないようにする試験方法
3) 次世代シーケンサー:培養法では検出できなかった細菌を含む全ての腸内細菌構成を解析できる機器分析装置
■お問い合わせ先
タカナシ乳業株式会社 総務人事部 広報担当
担当 : 長井
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TEL : 045(338)1828
【詳細は下記URLをご参照ください】
・タカナシ乳業株式会社 2018年3月【PDF】発表
・タカナシ乳業株式会社 公式サイト