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希少アミノ酸「エルゴチオネイン」の生産性を約 1000 倍に向上/長瀬産業

長瀬産業株式会社の研究開発施設「ナガセ R&D センター」(神戸市)では、独自の発酵技術をコア技術として、エルゴチオネイン(以下、EGT)※1の発酵生産技術の開発や、その機能性の研究に取り組んでいます。

このたび、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスマートセルプロジェクト※2で開発された革新的なバイオ技術を活用し、EGT 生産性を当社研究開始時の約 1000 倍に向上させ、微生物を用いた世界最高レベル※3 の生産効率を達成しました。今後は、開発した生産菌株を活用し早期の事業化を目指します。

EGT は、キノコなどに微量含まれる抗酸化能に優れた天然アミノ酸で、食品、化粧品、医薬品等の幅広い分野での利用が期待されています。既存の EGT の製法としては、天然物からの抽出法、化学合成法などが主流ですが、抽出法では天然物中の EGT が微量であること、化学合成法では環境負荷が大きいことなどから安価で環境にやさしい製造方法が確立されておらず、EGT の普及の課題となってきました。

こうした背景から、ナガセ R&D センターでは、2015 年より微生物を用いた発酵法で EGT を安定供給できる環境配慮型バイオ生産プロセスの開発を開始しました。さらに 2019 年度から NEDO のスマートセルプロジェクトの課題設定型産業技術開発費助成事業として「希少アミノ酸エルゴチオネイン高生産スマートセルの開発」研究プロジェクトを産業技術総合研究所、奈良先端科学技術大学院大学、神戸大学、東北大学と共に開始しました。「酵素改変設計技術」「代謝経路設計技術」「HTP 微生物構築・評価技術」「輸送体探索技術」という4種類のスマートセル基盤技術※4を活用し微生物細胞の EGT 生産能力向上を目指した結果、細胞内の生産反応の最適化に成功したことで、飛躍的な生産性の向上が可能になりました。ナガセ R&D センターでは、今後も先端バイオ技術を利用した研究開発を通して、高付加価値の製品をサステナブルなプロセスで提供し、「人々が快適に暮らせる安心・安全で温もりある社会」の実現に貢献していきます。

なお、同技術は 2020 年 10 月 14 日(水)~16 日(金)にパシフィコ横浜で開催される「BioJapan2020」の NEDO ブースでも展示、発表します。

※1 エルゴチオネイン(EGT):キノコなど一部の微生物のみが生産することができる天然アミノ酸。近年の研究で、ヒトには EGT を利用するための仕組みが備わっていることが明らかになりました。食事から摂取した EGT が脳機能の改善、皮膚、眼、各種臓器における酸化ストレスから細胞を保護することが示唆されています。
(Nature オンライン掲載の同社記事 URL: https://www.nature.com/articles/d42473-020-00227-4)
(同社ホームページ URL:https://www.nagase.co.jp/enterprise/nagase-r-and-d-center/document/RandD3_Ergothioneine_JP.pdf)

※2 スマートセルプロジェクト:NEDO が進める「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」プロジェクトの通称です。このプロジェクトでは、植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を最大限に引き出した“スマートセル”を作り出し、従来の化学合成法では生産が難しい有用物質の創製、生産プロセスの低コスト化や省エネ化を実現するための次世代技術の開発をオールジャパン体制で進めることで、次世代産業“スマートセルインダストリー”の実現を目指しています。

(Nature オンライン掲載のプロジェクト記事 URL: https://www.nature.com/collections/aehfijhibj)
(スマートセルプロジェクトホームページ URL:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100118.html)

※3 ナガセR&Dセンター調べ。

※4 スマートセル基盤技術:短期間での微生物の物質生産性向上を目指すために、同プロジェクトで開発された基盤技術。詳細は下記ホームページを参照。
(スマートセルプロジェクトの技術紹介 URL:https://www.jba.or.jp/nedo_smartcell/theme/)

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◎ NEDO 助成事業の概要
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(1) 事業名: 植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/微生物による高機能品生産技術開発/希少アミノ酸エルゴチオネイン高生産スマートセルの開発
(2) 事業期間: 2019~2020年度
(3) 助成先: 長瀬産業
(4) 成果に関する共同研究機関: 国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学、国立大学法人神戸大学、国立大学法人東北大学、国立大学法人京都大学 NEDO のホームページにおけるニュースリリース
URL:https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101361.html

【詳細は下記URLをご参照ください】
長瀬産業株式会社 2020年9月30日【PDF】発表
長瀬産業株式会社 公式サイト

2020年09月30日 17:41

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