カゴメ株式会社 は、ラブレ菌(Lactobacillus brevisKB290)の継続摂取が、肌の乾燥が気になる方の肌の潤いを守ることを明らかにしました。加えて、同効果は、ラブレ菌が腸内環境を改善することで発揮されていることが示唆されました。同研究内容は、2020 年 6 月に「薬理と治療」誌[48(6), 955-968 (2020)]に掲載されました。
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■ 同研究の目的
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私たちの腸管の内腔には、およそ 1000 種類、100 兆個もの細菌が棲むと言われており、その集合体は腸内菌叢(腸内フローラ)と呼ばれています。腸内菌叢は腸管内で様々な物質を産生していますが、その物質の一部(腐敗産物)は、腸から吸収され血液を介して肌まで届き、肌の細胞の分化を阻害することが知られています。したがって、腸内環境を良い状態に保つことで肌を健やかに保つことができ、肌の乾燥や肌荒れの予防につながると考えられます。一方、植物性乳酸菌であるラブレ菌は、生きて腸まで届き、腸内環境を改善することが明らかになっています。そこで同研究では、ラブレ菌が腸内環境改善作用を介して肌の乾燥を予防・改善するか否かを調査しました。
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■試験方法
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同研究では、以下の通り 2 つの試験(試験 1, 2)を実施しました。
【試験 1】
乾燥肌を自覚する健常な女性(平均 20.2 歳)を対象としました。試験参加者を無作為に 2 つの群に分け、一方の群(ラブレ菌群)にはラブレ菌を 35 億個/本以上含む飲料を、もう一方の群(プラセボ群)にはラブレ菌を含まない飲料を、1 日 1 本、4 週間摂取していただきました。摂取前後に、肌の潤いの指標とされる「角層水分量」と、腸内菌叢の代替として「糞便内菌叢」の変化を調査しました。
【試験 2】
試験 1 では 34 歳以下の若年層が試験参加者の多くを占めました。そこで、ラブレ菌の効果が若年層に限定的でないことを確かめるため、試験 2 では、幅広い年齢層の試験参加者を募集し、選抜した上で再度試験を実施しました。具体的には、乾燥肌を自覚する健常な女性(平均 42.4 歳)を 2 つの群に分け、ラブレ菌群にはラブレ菌を 14 億個/本以上含む飲料を、プラセボ群にはラブレ菌を含まない飲料を、1 日 1 本、8 週間摂取していただきました。摂取前、摂取 4 週間後、8 週間後に、「角層水分量」を調査しました。
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■ 結果
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【試験 1】
試験に参加した 70 名のうち規定通り試験を完遂した 64 名を対象に、角層水分量及び糞便内菌叢について、摂取前後での変化量をラブレ菌群とプラセボ群との間で比較しました。試験 1 は秋季から冬季という肌の乾燥が進む時期に実施したため、プラセボ群においては、前腕部、頚背部(首すじ)ともに摂取前後の変化量が大きく負の値を示しましたが、ラブレ菌群ではプラセボ群と比較し有意に高い値を示しました(図 1)。すなわち、ラブレ菌摂取により肌の潤いが守られたことが明らかになりました。また、糞便内菌叢についても、善玉菌の 1 つである Bifidobacterium 属(ビフィズス菌)や、内臓脂肪と負の相関があるとされる(*1)Blautia 属が高値を示すなど(図 2)、様々な細菌について、群間で有意な差が認められました。したがって、ラブレ菌摂取により肌の潤いが守られたと同時に、腸内菌叢が変化したことが確認できました。
【試験 2】
試験に参加した 99 名のうち規定通り試験を完遂した 94 名を対象に、摂取前から摂取 4 週間後、8 週間後の角層水分量の変化量を、群間で比較しました。その結果、試験 1 で効果が認められた前腕部に加え、頬部の角層水分量においても、摂取 4 週、8 週間後ともに、プラセボ群と比較しラブレ菌群で有意に高い値を示しました(図 3)。したがって、試験 1 で認められたラブレ菌の肌の潤いを守る効果は、より幅広い年齢で認められること、また、身体の様々な部位で発揮されることが示されました。
図 3.前腕部(A)および頬部(B)における角層水分量の摂取前から 4, 8 週間後の変化量(試験 2)
平均値±標準誤差、プラセボ群: n = 48、ラブレ菌群: n = 46、**p < 0.01 (Student’s unpaired t-test)
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■ まとめ
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以上の結果から、ラブレ菌の継続摂取は、肌の乾燥が気になる幅広い年齢の方々において、様々な部位の肌の潤いを守ることが明らかとなりました。さらにその効果には、善玉菌である Bifidobacterium 属(ビフィズス菌)の増加など、ラブレ菌による腸内環境改善作用が関与していることが示唆されました。
<ラブレ菌とは>
ラブレ菌は、京漬物“すぐき”から発見された植物性乳酸菌です。当社での研究で、腸内環境改善作用や免疫賦活作用をもつことが確認されています。
※右写真: (左)すぐき 提供: 京つけもの 西利 (右)ラブレ菌
<ラブレ菌が肌の潤いを守る推定メカニズム>
腸内細菌の一部は、食事由来のたんぱく質やアミノ酸を代謝し、フェノールや p-クレゾールなどの腐敗産物を産生します(*2)。これらの腐敗産物は、腸管内で吸収され血液を介して肌に到達することや(*3)、肌の保湿機能を維持するうえで重要な角化細胞の分化を阻害することが明らかになっています(*4)。したがって、腸管のバリア機能を高めて腐敗産物などの有害物質の血中への流入を抑制することで、肌の保湿機能を高めることができると考えられます。
一方同研究において、ラブレ菌を摂取することにより、Bifidobacterium 属や Blautia 属が増加することが確認されました。Bifidobacterium 属や Blautia 属は酢酸を産生すること(*5,6)、ラブレ菌自身も酢酸を産生することが明らかになっています(*7)。腸管内の酢酸は、腸管のバリア機能を担うムチンの産生を促進することや(*8)、実際に腸管のバリア機能を強化すること(*9)が報告されていることから、ラブレ菌摂取により腸管内の酢酸量が増加し、腸管のバリア機能が高まると推察されます。
以上より、ラブレ菌は、腸内細菌叢変動を介して腸内酢酸量を増加させ、腸管のバリア機能を高めることで腸内腐敗産物の血中への流入を抑制し、肌の潤いを守るのを助ける作用を発揮すると考えられます。
<参考文献>
*1: NPJ Biofilms Microbiomes. 5(1), 28 (2019),
*2: Am J Clin Nutr. 29(12), 1448-1454 (1976),
*3: Microb Ecol Health Dis. 21, 50-56 (2009),
*4: Microb Ecol Health Dis. 21, 221-227 (2009),
*5: 腸内細菌学雑誌. 30(3), 129-139 (2016),
*6: Int J Syst EvolMicrobiol. 62(Pt 4), 776-779 (2012),
*7: Int J Probiotic Prebiotic. 4(4), 263-270 (2009),
*8: Gut. 46(2), 218-224 (2000),
*9: PhysiolRep. 3(3), e12327 (2015)
【詳細は下記URLをご参照ください】
・カゴメ株式会社/PRTIMES 2021年7月30日発表
・カゴメ株式会社 2021年7月30日【PDF】発表
・カゴメ株式会社 公式サイト