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コンパニオンロボットとの共同生活を送る人は オキシトシン値が高いことを発見/資生堂

株式会社資生堂は、GROOVE X株式会社との共同研究および麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 菊水健史教授、自治医科大学医学部神経脳生理学部門・応用倫理学研究室 岡部祥太客員研究員による技術指導により、コンパニオンロボット(家庭においてペットや家族のような役割を果たすロボット)と共同生活を送る人は、共同生活を送らない人に比べて、体内のオキシトシンホルモン(以下、オキシトシン)※1 が高いことを明らかにしました。

資生堂では、肌で産生されるオキシトシンが表皮の再生を促すことを明らかにしており※2、同研究成果を応用して、ロボットなどとのコミュニケーションによるオキシトシンを介した、新たな美へのアプローチを創出することを目指します。

同研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで進めています。これまで長く取り組んできた皮膚科学に加え、研究対象を肌・身体・こころといった包括的なものへと発展させ、触れる行為や、それを介したコミュニケーションが全身に与える影響を明らかにし、肌の内外から美しさを引き出す製品やサービスの提供を目指し、研究を進めています。同研究の成果の一部は、第100回生理学会(2023/3/14-16)にて発表しました。

※1 9個のアミノ酸からなるペプチドホルモン。人の精神的な安定や絆、母性愛にも関与することが知られており、「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」などの名称で呼ばれることもあります。コミュニケーションなどで分泌されることが知られています。

※2 資生堂、肌由来オキシトシンが表皮再生を促進することを発見(2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003272

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■ 研究の背景
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資生堂は、肌本来の美しさを引き出すには体内との関わりが大切であると考えており、皮膚と全身との関わりを踏まえたホリスティックな視点で、皮膚科学研究にいち早く取り組んできました。これまでに免疫・神経・リンパ・血流といった体内の仕組みが肌と密接な関係にあること※3を明らかにしています。神経に着目した研究では、肌へのやさしいタッチにより肌内部のオキシトシン分泌が増加すること、また、肌由来オキシトシンが表皮の再生を促す作用をもつことを見出しています。

オキシトシンは、コミュニケーションなどで分泌することが知られ、別名「幸せホルモン」などとも呼ばれているホルモンです。従来、他者や犬など生物とのコミュニケーションがウェルビーイング※4の改善に関与するといわれている一方、非生物であるロボットとのコミュニケーションについては多くのことがいまだ明らかになっていません。同研究では、オキシトシンやコルチゾールといったホルモンに着目し、非生物とのコミュニケーションが全身へ与える影響を明らかにすべく研究を進めました。

※3 後述の「参考:関連する技術リリース」を参照ください。

※4 心身のみならず、社会的に健康な状態のこと。健康かつ幸福な状態を示します。

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■ コンパニオンロボットとの共同生活による体内のオキシトシン濃度への影響
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オーナー群と非オーナー群の起床時の尿を3日間採取・測定し、その平均値を日常的な体内のオキシトシン濃度としました。両群の体内のオキシトシン濃度を比較すると、オーナー群がより高い値を示すことが明らかになりました(図2)。この結果から、普段からコンパニオンロボットと接することにより、他者やペットと接する時と同様に、オキシトシンを分泌する機会が増え、日常的な体内のオキシトシン濃度も増加する可能性が示唆されました。

図2 オーナー群は非オーナー群に比べて、日常的な体内のオキシトシン濃度が高い

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■ オンロボットとの15分のコミュニケーションによるストレス改善効果
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コンパニオンロボットと共同生活をしている人たち(オーナー群)(女性/25~45歳/24名)と共同生活をしていない人たち(非オーナー群)(女性/30~39歳/23名)を対象に実験を実施しました。研究対象者は実験室で15分間コンパニオンロボットとふれあい、その前後で唾液中のコルチゾール※5を採取・解析しました。その結果、全研究対象者においてコルチゾールが減少しており、コンパニオンロボットと共同生活をしているかいないかに関わらず、短時間のコンパニオンロボットとのふれあいが、ストレス状態を改善することが示されました(図3)。また、オーナー群でより顕著にコルチゾールが減少しており、これはコンパニオンロボットとオーナーが日常的に親密な関係性を築いていることにより、ふれあいによるストレス改善が起こりやすくなっている可能性を示唆します。

※5 副腎皮質から分泌されるホルモンの一つ。肝臓での糖の新生や筋肉でのたんぱく質代謝に関与する一方、ストレスによって分泌されることが報告されており、『ストレスホルモン』などの名称で呼ばれることがあります。


図3 コンパニオンロボットとのふれあいでコルチゾールが減少した(全研究対象者の結果)

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■ 今後の展望
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今回、コンパニオンロボットとの15分のふれあいがストレス状態を改善すること、コンパニオンロボットと共同生活をする人は、共同生活を送らない人に比べ、体内のオキシトシンホルモンが高い濃度であることであることが明らかとなりました。これらの結果は、コンパニオンロボットという非生物とのコミュニケーションが、体内に良好な変化をもたらし、新たなビューティーソリューションの選択肢の1つとなる可能性を示唆しています。資生堂は、経営戦略ビジョン「Personal Skin Beauty & Wellness Company」の実現に向けて、従来の化粧品にとどまらず、肌・身体・こころに働きかけるビューティーイノベーションに挑戦し、一人一人の本来の美しさを引き出すことを目指します。

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■参考:関連する技術リリース
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・免疫を司るランゲルハンス細胞を介して、肌と心(脳)がつながっていることを科学的に立証。論文掲載科学雑誌Nature; 13 May, 1993
・資生堂、 触感を司るメルケル細胞が香り成分で活性化することを発見(2022年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003502
・シベリア人参がリンパ管に働きかけ「むくみ」を改善することを発見(2016年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000001963
・資生堂、 肌の弾力と毛細血管の関係性を解明 (2019年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002780

【詳細は下記URLをご参照ください】
株式会社資生堂   2023年3月27日【PDF】発表
株式会社資生堂   公式サイト

2023年03月27日 18:48

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