資生堂は、唇に塗布すると色材を集め、唇上で蒸発する水を感知して色材がネットワークを形成する「ウォーターセンシングテクノロジーTM」を開発しました。色材がループ状にネットワークを構成することで、色材一つ一つが離れにくく、唇に密着して高い色持ち効果を発揮します。
加えて、色材を密着性の高い油や被膜剤で維持していたこれまでの口紅とは異なり、塗膜を固化しないため、なめらかで軽い付け心地と高い色持ち効果を両立した口紅製剤を実現することに成功しました。本技術は、2023年11月21日に発売する『マキアージュ ドラマティックエッセンスルージュ』に搭載されます。
図1 ウォーターセンシングテクノロジー TM を搭載した口紅の塗布イメージ図
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研究の背景
お客さまに理想の口紅の条件に関するアンケート調査を行うと、「うるおいがある」「つやがある」、そして「落ちにくい・二次付着レス」という項目が上位に挙がる傾向があります。近年では、口紅の基本機能として、カップやマスクへ色が付かず、飲食後や長時間経過しても色が保たれる「落ちにくい・二次付着レス」効果が求められています。
同社はこれまで独自のオイルコントロール技術を活用して、つや、透明感のある仕上がりと色持ち、二次付着レス効果を両立する口紅の開発を行ってきました※1,2。
今回、更なる色持ち、二次付着レス効果を備えた口紅の実現に向けて、従来技術では、色材を保持している油分がマスクなどのこすれによって取れる際に色材まで一緒に取れてしまうという点に着目。
この点は塗膜を固化する被膜剤を用いて流動性をなくすことで解決できますが、付け心地が悪くなるため、今回、同社では塗膜の流動性を維持しながら、さらに高いレベルでの色持ち、二次付着レス効果の向上を目指し新たなアプローチを探索しました。
※1資生堂、女性たちが長年待ち望んでいた「理想の口紅」が遂に登場!
https://corp.shiseido.com/jp/rd/ifscc/17.html
※2資生堂、世界初のハイブリッド処方を採用した新価値の口紅を開発 (2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003196
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ウォーターセンシングテクノロジーTMの口紅への応用
今回、唇上の水と相性の良い油性成分に着目し、新しいアプローチでの色持ち、二次付着レス効果の向上を試みました。
同社が開発した「ウォーターセンシングテクノロジーTM」は、唇に塗布すると色材を集め、唇上で蒸発する水を感知して、色材はループを形成します。その色材ループは水と相性がよいため、色材ループが唇のような親水性の界面に集まり、つながることで色材の強固なネットワーク構造が完成し(図1,2)、色持ちの良さが実現します。
また、本技術を搭載した口紅の膜性質を調べると、塗布中はなめらかで液体のような流動性を示しており、塗布後に水と反応しネットワーク形成すると、流動性が弱まり、塗膜が心地よい程度のゲル状の性質(弾性)に変わることがわかりました。(図3)
図2 ウォーターセンシングテクノロジーTMにより、色材ネットワーク構造が形成される様子
図3 水添加による塗膜性質(柔軟性と弾性比率)の変化
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滑らかな使用性と優れた色持ち効果
口紅の摩擦力を専用の機器で測定すると、新技術搭載の口紅の方が摩擦力が小さく、唇への負荷が少なく、なめらかな塗り心地を実現していることがわかりました(図4)。
本基剤を使用した際の仕上がりを観察すると、塗布後、普段通りに過ごした4時間後でも、色・つやともに維持され、キレイな仕上がりが続く結果となりました(図5)。
ウォーターセンシングテクノロジーTMを搭載した口紅製剤は、塗膜が留まりやすい状態(弾性的)に変化をするものの、硬く固まらず、色材の柔らかい凝集で色持ちを持続しているため、乾燥を感じにくく、色持続を実現することができています。
図4 ウォーターセンシングテクノロジーTMを搭載した口紅製剤は、摩擦力が小さくなめらかな使用性
図5 透明感がありなめらかな仕上がり、経時でも色・つや落ちずに、キレイな仕上がりが続く
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今後の展望
今回同社が開発したウォーターセンシングテクノロジーTMを搭載した口紅は、塗膜が硬くならずゲル状の性質(弾性)で形成されるため、これまで実現が困難であった、なめらかで軽い付け心地と高い色持ち効果の両立を実現可能となりました。
マスクを外しリップメイクを楽しむ方も増えている今、生活者一人ひとりが自信を持って幸せを実感した毎日を過ごしていただけるよう、同社では今後も強みのマテリアルサイエンス領域の技術開発を精力的に進め、生活者の期待を超える商品を生み出し続けるとのことです。
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R&D戦略について:
R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、お客さまの求める 化粧品の価値を強みのマテリアルサイエンスで追求し実現する「化粧品処方技術」領域にて、本研究を進めたとのことです。
・2022年統合レポート(ビューティーイノベーション)
https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/
・キーワード
Skin Beauty INNOVATION 、 ポイントメーキャップ、リップ
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【詳細は下記URLをご参照ください】
株式会社資生堂 2023年9月29日発表
株式会社資生堂 公式