株式会社ネイチャーラボの感覚研究部門「センソリアルラボラトリーズ」はプラスメディ株式会社と共同で、就寝時にアロマ(芳香)を寝室、寝具等に使用することによる睡眠の質に対する影響を評価いたしました。その結果、睡眠の質や睡眠時間の改善、またそれにより心身の疲労やストレスを緩和する効果が期待できるという結果が得られました。
◆調査背景
プラスメディはオープンイノベーションで健康と美容の研究開発を支援する企業です。日本において、学術研究と産業応用を加速させるハブ企業となるべく、2020年に設立されました。これまでも大学発ベンチャー、化粧品・製薬メーカー等の企業との実績を重ねてきています。
厚生労働省の調査では、睡眠による休養を十分にとれていない人は2割を超えていることが報告されています※1。また睡眠が心と体の健康に大切と言われており、スリープテック市場の増加からもそのニーズの大きさがうかがえます。
今回、センソリアルラボが調合した複数のアロマについて、睡眠の質の改善作用を評価しました。
※センソリアルラボでは「香り」とウェルビーイングが密接に関係すると考え、健康と美容に関する香りの研究をおこなっています。
◆試験の概要
日本人の成人男女合計20名に協力頂き、2週間の試験を実施しました。試験は20名を2つのグループに分けたクロスオーバー試験とし、1つめのグループは普段通りの生活を1週間した後、アロマを寝室、寝具に賦香し、1週間使用してもらいました。もう1つのグループはその反対の使用順番としました。
睡眠評価はウェアブルデバイスとして健康管理に活用されているFitbit®による睡眠測定と、主観的な睡眠を評価するOSA睡眠調査票MA版※2を使用。さらにVAS※3によるストレスと疲労感を評価しました。
◆試験結果の概要
アロマを睡眠時に使用することで、Fitbit®で計測した睡眠時間が増加しました(図1)。また、OSA睡眠調査票MA版※2の結果では、第2因子「入眠と睡眠維持」※2、第4因子「疲労回復」※2、第5因子「睡眠時間」※2のスコアが増加し、睡眠の質や睡眠による疲労の回復が見られました(図2)。
さらに試験参加者によるVAS※3の回答では、アロマの使用によりストレスと疲労感の軽減がみられました(図3)。また、今回の研究において芳香成分が寝室に飛沫している状態で就寝すること、また寝具に芳香成分が付着し皮膚へ直接接触することへの安全性も同時に確認されました。
以上の研究結果から、アロマにより睡眠の質や時間が改善され、それにより心身の疲労、ストレスを緩和する効果が期待できることが予想されます。
今回の共同研究成果によりアロマを入眠時に使用することでストレスや疲労を感じがちな現代人のウェルビーイングの改善への可能性が示されました。当研究所は今後も香り成分やスキンケア成分による心と体、肌への有効性を検証し100年時代におけるウェルビーイングとそのメカニズムの研究を継続して参ります。
<データ>
※1 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会 第1回資料
※2 起床時の睡眠を評価する心理尺度で、第1因子:起床時眠気(sleepiness on rising),第2因子:入眠と睡眠維持(initiation and maintenance of sleep), 第3因子:夢み(frequent dreaming),第4因子:疲労回復(refreshing), 第5因子:睡眠時間(sleep length)の5因子、計16項目から構成されています。引用論文:「山本由華吏, 田中秀樹, 高瀬美紀, 山崎勝男, 阿住一雄, 白川修一郎: 中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠感調査票(MA版)の開発と標準化. 脳と精神の医学 10: 401-409, 1999.」
※3 ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)の略で、白紙に100mm の線を引いた左端を「疲れをまったく感じない最良の感覚」または「まったくストレスがない」とし、右端は「何もできないほど疲れ切った最悪の感覚」または「最も深刻なストレス」とした場合、試験参加者が感じる疲労やストレスの程度を直線上に印をつけ、左端からの長さをはかることで、疲労やストレスの程度を数値としたもの
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