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アスタキサンチンが COPD(慢性閉塞性肺疾患)の改善に効果的であることを証明/大阪市立大学

2019年12月4日、大阪市立大学はプレスリリースで「~イソフラボンに続く新たな改善法を発見! ~アスタキサンチンが COPD(慢性閉塞性肺疾患)の改善に効果的であることを証明」を公表しました。

<発表内容のポイント>
◇ カニ、エビなどの甲殻類や鮭に含まれる橙赤色の色素であるアスタキサンチンに、肺気腫予防効果があることをマウス実験で証明
◇ アスタキサンチンが抗酸化作用を介して肺気腫を抑制するメカニズムが明らかに

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■ 概 要
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大阪市立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学の久保寛明(くぼ ひろあき)大学院生、浅井一久(あさい かずひさ)准教授、川口知哉(かわぐち ともや)教授らの研究グループは、抗酸化物質でカニ、エビなどの甲殻類や鮭に含まれるアスタキサンチンが COPD(慢性閉塞性肺疾患)の肺気腫の予防に効果的であることを明らかにしました。

COPD は、日本では約 500 万人以上が罹患している病気です。COPD の主な原因はタバコ煙の吸入であり、タバコ煙によって肺胞が破壊され、肺気腫を形成します。COPD は進行すると咳や痰、息切れが生じ、在宅酸素療法※1が必要になる患者さんもいます。COPD による死亡者数は年々増加しており、全世界の死因第 3 位の疾患であると報告されています。現時点ではタバコ煙によって破壊された肺を元に戻す有効な治療法はなく、禁煙と気管支拡張薬等の対症治療が中心とされています。

そこで浅井准教授らの研究グループは、喫煙曝露により肺気腫を発症するマウスにアスタキサンチンを投与したところ、肺組織における抗酸化能の上昇と肺気腫の抑制効果を認めました。アスタキサンチンに着目し、肺気腫の抑制効果を証明した研究は、同研究が初めてです。同研究は、アスタキサンチンが抗酸化作用により肺気腫予防効果を発揮することを実験的に明らかにしたもので、今後の COPD の予防および治療確立に向けて重要な知見であるといえます。同研究成果は国際科学雑誌 『Marine drugs』に日本時間 2019 年 11 月 28 日にオンライン掲載されました。

※1 自宅に酸素を供給する機械を設置して、室内空気より高い濃度の酸素を投与すること。

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■ 研究者からのひとこと(浅井一久 准教授)
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現在の COPD 治療は、気管支拡張薬等を用いた対症治療にとどまっています。肺気腫の予防・改善といった根本的治療法の確立に向けて、引き続き「抗酸化治療」の研究を進めて参ります。

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■ 研究の背景
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COPD は、タバコ煙などの有害ガスの長期吸入によって引き起こされます。タバコ煙には活性酸素種※2などの有害物質が多く含まれており、活性酸素種の過剰による酸化ストレスはCOPD の病態において重要な役割を果たしています。

一方、生体内では Nrf2 (Nuclear factorerythroid 2-related factor 2)という転写因子※3を活性化させることにより、酸化ストレスに対する防御メカニズムを発動することが知られています。アスタキサンチンは、カニ、エビなど甲殻類や鮭に蓄積されている橙赤色の色素でリコピンや β-カロテンと同じカロテノイドの一種です。抗酸化力はビタミン C の約 6000 倍、コエンザイム Q10 の約 800 倍ともいわれており、強力な抗酸化物質です。

最近の研究では、アスタキサンチンが Nrf2 を介して酸化ストレスから生体を保護することが解明されています。これらの報告に基づいて、アスタキサンチンが肺での Nrf2 発現を高め、酸化ストレスを低減させ、タバコ煙による肺気腫を改善するのではないかと仮説をたてました。

※2 酸素分子に由来し、生体内において DNA、脂質、蛋白質、酵素などの生体高分子と反応し、その結果、脂質過酸化、DNA 変異、蛋白質の変性、酵素の失活をもたらす分子。

※3 DNA に特異的に結合するタンパク質の一群。

【詳細は下記URLをご参照ください】
大阪市立大学 2019年12月4日【PDF】発表
大阪市立大学 公式サイト

2019年12月04日 18:15

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