(理化学研究所 2017年7月21日発表内容)
原子同士の結合間で電荷分布に偏りがあることを極性と呼びます。ポリエチレンに代表されるポリオレフィンには極性ユニットがないため、極性基を含むポリマー材料やガラス繊維などとの親和性が低く、これらの材料との混合利用が難しいといった問題があります。
これまで、極性モノマーであるヘテロ原子(炭素、水素以外の原子)を含むオレフィンモノマーを非極性モノマーであるエチレンと共重合させ、対応するヘテロ原子を含むポリオレフィンを合成する研究が行われてきました。しかし、極性モノマーは非極性モノマーよりも重合活性が低いため、従来のチタンやジルコニウムなどの第4族の遷移金属触媒やニッケルやパラジウムなどの第10族の遷移金属触媒では、導入できる量や生成物の分子量が低いといった問題がありました。
そこで、理研を中心とする国際共同研究チームはこれまでの研究から、第3族の希土類金属がヘテロ原子に対し特異な親和力を持つことに着目し、希土類に属するスカンジウムやイットリウムなどとヘテロ原子との特異な相互作用を生かした触媒設計や分子設計を行いました。その結果、ヘテロ原子(酸素、硫黄、セレン、リン、窒素)を含むα-オレフィン(二重結合が末端にある)とエチレンとの共重合を任意の混合比で実現し、さまざまなヘテロ原子を含む高分子量の機能性ポリオレフィンの合成に成功しました。さらに、α-オレフィンのヘテロ原子が金属イオンに配位して、重合反応が進行する作用機構を理論計算によって明らかにしました(図参照)。
本成果は従来の認識を覆すものであり、極性モノマーと非極性モノマーの共重合触媒の設計・開発に新しい指針を与えるものです。また、得られたポリマー材料は、少量の添加で効果を発揮する環境調和型のポリオレフィン改質剤としての応用や、従来のポリオレフィンとさまざまな極性ポリマー材料をつなぐ接着材としての利用が期待できます。
図 希土類金属触媒によるエチレンと極性モノマーとの共重合反応
【詳細は下記URLをご参照下さい】
・理化学研究所 2017年7月21日発表
・理化学研究所 2017年7月21日発表(簡易版)
・理化学研究所 公式サイト