花王株式会社生物科学研究所およびパーソナルヘルスケア研究所は、ヒトや家庭内における菌の存在や特性について研究を重ねてきました。これらの研究の一環として、このたび、温熱蒸気とユーカリの香気成分を同時に吸入することで、鼻腔内の黄色ブドウ球菌が減少することを確認しました。
同研究の成果は、第92回日本細菌学会総会(2019年4月23~25日、札幌市)および、第120回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会(2019年5月8~11日、大阪市)にて発表しました。
■研究内容
蒸気や香料には、生体防御機構である繊毛運動を活性化する作用や菌を殺菌する作用など、さまざまな生理機能が報告されています。*1
このたび、花王は、鼻や副鼻腔における主要な感染起因菌のひとつである、黄色ブドウ球菌に注目し、温熱蒸気のみ、あるいは温熱蒸気とユーカリの香気成分の同時吸入が、鼻腔内の黄色ブドウ球菌に与える影響について調べました。同研究は、帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科 鈴木雅明教授のご指導、ご協力のもと行ないました。
* 1 帝京大学医真菌研究センター 井上重治 「香りの抗菌作用-アロマセラピーへの応用」(化学と生物 Vol.39、No.7、2001)、Atishkumar B. Gujrathi, et al. International Journal of Contemporary Medical Research, Vol.3,Issue 5,1262-1264, May 2016 など
<試験方法>
健常男性を対象に、無香のカップ状蒸気発生具(無香品群:23名)、およびユーカリオイル含有香料を添加したカップ状蒸気発生具(賦香品群:23名)を使用させる2群に分け、並行群間比較試験を行ないました。カップ状蒸気発生具は、1日2回、各10分間、口と鼻を覆うようにあて、鼻から蒸気を吸入する方法で、2週間の継続使用をしました。鼻腔の粘膜(上咽頭あるいは中鼻道)より粘液を一定量採取し(図1)、カップ状蒸気発生具使用の前後での菌量の変化を測定しました。
<試験結果>
2週間の各カップ状蒸気発生具の使用前後における、上咽頭、中鼻道それぞれの、全体の菌量の変化に有意な差は認められませんでした(図2)。
一方で、上咽頭および中鼻道の黄色ブドウ球菌量は、2週間使用後、無香品群(温熱蒸気のみ)で減少傾向を示し、特に香気成分を添加した賦香品群においては有意な減少が認められました(図3)。
以上の結果、温熱蒸気とユーカリの香気成分を日常的に吸入することで、鼻腔の黄色ブドウ球菌が減少しました。感染起因菌のひとつである黄色ブドウ球菌の減少により、感染リスクの低減につながる可能性が示唆されました。
(黄色ブドウ球菌は、鼻や副鼻腔での感染を引き起こす菌の一種であり、殺菌作用の効果を確認するための対象指標としてみています。したがって、試験開始前に黄色ブドウ球菌を保菌していた者のみを解析対象としています。)
【詳細は下記URLをご参照ください】
・花王株式会社 2019年6月3日発表
・花王株式会社 公式サイト