株式会社野村総合研究所は、人口規模等を考慮して選定した国内106都市1を対象に、誰もがスポーツに親しみ、アクティブかつ健康的な生活を営む都市の環境について、スポーツを「する」「みる」「ささえる」の3つの視点から分析を行い、「スポーツ環境」都市ランキングを作成しました(図1)。
スポーツを「する」環境の分析にあたっては、体育・スポーツ施設等の充実度や、ウォーキング・ランニング環境(まちなかの歩きやすさ、走りやすさ)、アウトドア環境(都市公園面積、みどりに触れ合える機会の多さ)等のスポーツ意欲を高める都市環境に係る指標、「みる」環境の分析には国内トップリーグ3の試合や、様々な国際・国内競技大会の直接観戦機会に係る指標、「ささえる」環境の分析には、スポーツボランティア等住民の積極性、スポンサー等企業の積極性、地域スポーツコミッション4の設置等自治体の積極性に係る指標を用いています。
結果として、「スポーツ環境」が充実している都市は上から順に横浜市、札幌市、長野市でした。スポーツを「する」「みる」「ささえる」の3つの視点からのランキングを見ると、スポーツを「する」環境が充実しているのは鳥取市、長岡市、松本市、「みる」環境が充実しているのは横浜市、札幌市、大阪市、「ささえる」環境が充実しているのは福井市、山形市、前橋市でした。
「する」環境で第1位となった鳥取市では、体育館、陸上競技場、野球場、プール施設等が人口一人当たり施設数、面積の観点から充実しているいえるほか、都市内のウォーキング・ランニング環境、緑豊かな環境、バリアフリー環境等も充実しており、市民がスポーツを「する」環境が充実していると言えます。
「みる」環境で第1位の横浜市は、Jリーグ、プロ野球のチームの本拠地となっており、ホームスタジアムが市内に立地しているため、トップリーグ試合の観戦機会が充実しているほか、市として積極的に競技大会を招致しており、様々な競技の試合を観戦する環境が整備されています。
「ささえる」環境で第1位の福井市は、様々なスポーツ大会の運営を支えるスポーツボランティアの参加割合の高さ、スポーツ指導者数の多さ等、市民のスポーツに対する積極性が確認されています。
これら都市が有するスポーツ環境が住民のスポーツ実施率・観戦率を高め、それが健康・経済・地域等のまちづくりの効果として表れているのが「スポーツ都市」と考えられます(図2)。一方、スポーツ環境が充実しているものの、住民のスポーツ実施率や観戦率が高いとは言えない都市については、地域のスポーツ環境を活かし、当該自治体が中心となって住民のさらなるスポーツ実施、観戦を促す取組みを推進していくことが期待されます。
各都市における地域固有のスポーツ環境を活かした「スポーツまちづくり」により、誰もがスポーツに親しみ、それがまちづくりの効果として地域活性化および住民の健康増進に繋がっている「スポーツ都市」を目指す機運が一層高まっていくことが期待されます。
1
政令指定都市、中核市、県庁所在地、施行時特例市に該当する都市を対象。特別区は対象外とする。
2
2019年12月閣議決定「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を参照。
https://www.chisou.go.jp/sousei/info/pdf/r1-12-20-senryaku.pdf
3
「JSPO(日本スポーツ協会)に加盟している中央競技団体競技またはその関連団体が運営、公認するトップリーグ」かつ「リーグ所属チーム全てホームタウン又はホームスタジアムが明記されているもの」とした。
4
地方公共団体、スポーツ団体、民間企業等が一体となり、地域レベルでのスポーツイベント開催支援やスポーツツーリズムの推進、合宿やキャンプ誘致などスポーツと地域資源の掛け合わせによる「地域のマーケティング」全般に係る取り組みを推進する組織。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・株式会社野村総合研究所 2022年4月28日【PDF】発表
・株式会社野村総合研究所 公式サイト