ショウガ根抽出物と肌へのタッチのイメージ
創業139年、美と健康を追求し続けている株式会社桃谷順天館は、化粧品製剤が肌に触れた際の感覚を高め、心地良い、落ち着くといった化粧品における感情価値向上に繋がると考えられる植物抽出物としてショウガ根抽出物を見出しました。
さらに、ショウガ根抽出物を配合した独自製剤の使用により総合的な気分状態がより良くなる可能性があることを明らかにしました。同研究成果は、特許登録(第7436069)されるとともに、「第2回日本化粧品技術者会学術大会」(2024年11月18~20日:神戸国際会議場)にて発表いたしました。
【研究背景】
化粧品は保湿等で肌の状態を整えるだけでなく、香りや使用感を通じて心地良さ等も提供することがあります。我々は、化粧品の使用において、製剤塗布時の触れた感覚を高め、心地良い、落ち着くといった感情の価値をより高めることができないかと考えました。
触れることによる心地良さ等を感じてもらうためのヒントとして、例えば、ぬいぐるみやクッションを軽く抱きかかえたり、肩にそっと手を添えられたりした際に感じる心地良い、落ち着くという感情に注目しました。今回我々は、皮膚の「触」を感じ取るものの中から表皮メルケル細胞にある触圧を感知する仕組み(Piezo2受容体)に着目し、Piezo2受容体を増やすことで化粧品使用時の心地良さ等の気分状態の向上につながっていくのではないかと考え、研究を行いました。
【研究の詳細】
約200の植物からPiezo2の遺伝子発現およびタンパク量を有意に増加させる植物エキスを探索した結果、ショウガ根抽出物が有効であることを発見しました。
図1ショウガ根抽出物によるPiezo2受容体のタンパク量の増加
上記の結果をもとに、ショウガ根抽出物配合製剤および無配合製剤を頬に連用塗布した際の気分状態について、使用感を言葉にして評価する触感評価用語法と、心理検査であるPOMS2法の2つ評価法を用いて検討しました。
その結果、触感評価用語法では、安心、落ち着くといった用語を選択した人数が多い傾向を示し、POMS2法では、アンケート結果をもとに算出されるT得点(低いと気分状態良好・高いとその逆)の有意な低下が認められ、総合的な気分状態が良くなったことが確認できました。
以上の研究から、ショウガ根抽出物を配合した独自製剤を使用することで、安心、落ち着き、総合的に気分状態がより良くなる可能性が示唆されました。
図2ショウガ根抽出物配合製剤使用時の触感評価用語の変化
図3ショウガ根抽出物配合製剤使用時の触感評価用語の変化
【今後の展望】
今後は化粧品に応用して塗布時における消費者の満足感を高めていくことができればと考えております。また、同社では医療分野へのサポートを行うウェルネス事業も展開しています。患者さまやそのご家族がストレス等で気分が低下することがあるため、同研究を通じて生活の質(QOL)の向上につながる製品開発にも応用していきたいと考えております。