株式会社ファンケルは、総合研究所での基礎研究を通じ、機能性粉体に着目した研究開発を進めてまいりましたが、この度、甲南大学理工学部機能分子化学科と同社の共同研究を行い、ポリトリメチレンカーボネート*1に特定の分子を結合させることにより、水分に応答して分子の状態が変化し、水への濡れ性をコントロールできるポリマー*2の開発に成功致しました。また、このポリマーを表面処理した粉体は、化粧もちに重要な耐水性と、洗浄時の洗い流しやすさを併せ持つことを確認いたしました。<特許出願中>
なお、この研究成果は本年 10 月 27 日から 30 日にフランス共和国 パリで行われた「第 28 回 IFSCCCongress*3」において発表いたしました。同社では今後、この技術をファンデーションやサンスクリーンの製品開発に応用していく予定です。
◆研究の概要
(研究の経緯・目的)
ファンデーションなどのメイク製品には優れた化粧もち効果が求められるため、使用される粉体には撥水処理が施されます。しかし、撥水処理粉体は化粧もちが向上する一方で、洗浄時に水で洗い落としにくいという問題が生じます。そこで同社では、水分に応答して表面に存在する分子の状態が変化するポリトリメチレンカーボネート(PTMC)誘導体に着目し、耐水性(化粧もち効果)と洗い流しやすさを両立する製品の開発に向け、甲南大学理工学部機能分子化学科と共同研究を続けてまいりました。その結果、乾いている状態では撥水性を示し、水に濡れると徐々に親水性へと変化する新規ポリマーの開発に成功。このポリマーを表面処理した粉体の特性を評価するとともに、表面処理した粉体を用いたファンデーションについても化粧もち効果、洗い流しやすさについて評価しました。
(研究の方法および結果)
耐水性を持たせるための疎水基としてポリジメチルシロキサン(PDMS)*4 を結合させた PDMS-PTMC と、洗い流しやすさを持たせるための親水基としてメチル基末端ポリエチレングリコール(mPEG)*5 を結合させたmPEG-PTMC という 2 種類のポリマーをそれぞれ合成しました。各ポリマーの長さや混合比率などを変え、様々な条件でポリマーが水に濡れたときの表面の濡れ性変化を評価しました。
◆Step1 水への濡れ性が大きく変化するポリマーの新開発
PDMS-PTMC とmPEG-PTMC をそれぞれ合成し、それらを最適な比率で混合することにより、水に対する濡れ性が疎水的から親水的へと大きく変化することを見出しました。さらに、ポリマーの長さを変えることにより、疎水性から親水性に変化するスピードをコントロールできることが分かりました。
◆Step2 新規 PTMC ポリマー処理粉体の水への濡れ性評価
合成した 2 種類の PTMC ポリマーを表面処理した酸化チタンの水への濡れ性を評価しました。また、比較対象として表面処理されていない酸化チタンと、化粧品に一般的に使用される撥水処理酸化チタンを用いました。その結果、PTMC ポリマーを表面処理した酸化チタンは、水に短時間触れた場合は一般的な撥水処理酸化チタンと同様に耐水性を示し、長時間触れた場合は親水性が高くなったことから、水分の量(接触時間)に応じて耐水性から水になじむ性質へと変化する PTMC ポリマーの特性(水分応答性)を粉体に付与できることが分かりました。
◆Step3 新規 PTMC ポリマー処理粉体の耐水性と洗い流しやすさ評価
2 種類の PTMC ポリマーを表面処理した酸化チタンを人工皮革に塗布し、耐水性と洗い流しやすさを評価した結果、少量の水に触れた程度では粉体は人工皮革に付着したままでしたが、多量の水では洗い流すことができたことから、この粉体が耐水性と洗い流しやすさを両立できることが分かりました。これらの新素材を配合したファンデーションの機能性を評価したところ、耐水性効果により化粧もちに優れ、洗浄時には水で簡単に洗い流すことができるという特長があることが確認されました。同社では今後、この技術を同社のファンデーションやサンスクリーンの製品開発に応用していく予定です。
◆研究発表の今後の展開◆
ファンケル総合研究所では、本研究の成果を本年 10 月 27 日から 30 日にフランス共和国(パリ)にて開かれた「第 28 回 IFSCC Congress」で「Development of powder with water-resistance and easily wash-offproperties using poly(trimethylene carbonate) derivatives and its application to cosmetics」としてポスター発表いたしました。さらに、2014 年 11 月 28 日に行われる IFSCC の国内研究発表会でも発表する予定です。同社では今後も、メイクアップ化粧品の仕上がり効果や機能性に着目した開発に取り組んでまいります。
【 用語解説 】
*1 ポリトリメチレンカーボネート
生分解性ポリマーとして外科用縫合糸などにも使用される生体適合性材料です。
*2 ポリマー
多数の分子が結合してできる物質のことです。
*3 IFSCC Congress
日本化粧品技術者会の母体組織である国際化粧品技術者連盟(The International Federation of Societies ofCosmetic Chemists、略して IFSCC)は世界各国の化粧品技術者会の連合組織。IFSCC は化粧品開発のための諸活動を国際規模で行っており、この行事のうち、最大なものは各国の化粧品技術者が一堂に介して、研究成果を発表し、討論することを目的として開催される学術大会です。この学術大会には西暦偶数年に開催される Congressと西暦奇数年に開催される Conference に分けられ、同社は本研究に関し 2014 年の Congress にて発表しました。
*4 ポリジメチルシロキサン
一般的にシリコーンと呼ばれる撥水性に優れた材料です。
*5 メチル基末端ポリエチレングリコール
化粧品の保湿剤としても使用される親水性の材料です。
※詳細、お申込みは下記URL(PDF)をご参照ください
◎ 株式会社ファンケル 2014年11月26日発表
http://www.fancl.jp/news/pdf/2014.11.26_suibunoutouseiwomotsufuntai.pdf
◎株式会社ファンケル 公式サイト
http://www.fancl.jp/