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<食壇>環境にやさしい食品製造をめぐる諸問題

食品リサイクル法が施行されてからはや4年が経過した。この法律では食品事業者が5年後の平成18年度における再生利用等の実施率を20%とすることが定められている。つまり来年までに該当の食品事業者は食品廃棄物の20%を再生利用しなければならないのである。さらに、目標達成されるはずの平成 18年度には当然食品リサイクル法の見直しが行われ、さらに進んだ目標値が課せられるのは必至である。一方、97年京都で行われた「地球温暖化防止に関する国際会議」において、わが国は2010年におけるCO2排出量を90年レベルに比べて6%削減する旨を公約した。この国際公約は家庭や運輸も含めた日本全体に対するものなので、比較的コントロールしやすい産業界に対しては6%を大幅に上回る削減率が要求されている。各業界ごとに削減率が示されており、食品関連業界ではビール製造業で6.0%、製糖業で16.2%の削減目標が課せられている。各企業はこれらの宿題を果たすために、また企業の社会的責任において、リサイクルやCO2削減に向けて様々な努力を行っているが、障害も多く、なかなか目標値を達成しきれないのが現状である。  食品の廃棄物の処理方法として、特に腐敗しやすい生ゴミについては、従来、肥料・飼料に変換して環境に返すという手法が一般的であった。しかし家庭用を含め多くの生ゴミが出るのが都市部であり、肥料・飼料の消費は農村部で行われる。リサイクルに係わるコストに加えて、輸送料を取られるのでは非常に高価な肥料となり、結局利用率は上がらない。それよりもCO2を排出しながら遠い距離を運ぶのでは、環境還元の意味もなくなる。  こうしたところから、地産地消、さらにはゼロエミッションという考え方がでてきた。すなわち食品廃棄物はその地域、その工場で使用できるものに変換するということである。近年増えているのが生ゴミからバイオガスを作り、施設使用エネルギーの一部をこのバイオガスに置き換えるものである。設備費が数千万円から数億という投資に加え、維持費もかかるという欠点はあるが、廃棄物は大幅に減らすことができる。  リサイクル研究センターを設置し、環境改善の研究に積極的に取り組む東京農大では、食品廃棄物から個体エタノールを製造するシステムの開発に取り組んでいる。これは生ゴミを乾燥させ、夾雑物を取り除いてペレット状に造粒した後、焼酎麹菌の胞子を付着させ、ペレット麹を作成し、これを他のペレットと混合し、焼酎用酵母を加えて発酵しエタノールを製造するもの。出来たエタノールは食用にはできないが、設備の殺菌や手指の消毒に使用できる。施設費用もそれほど高価なものを必要とせず、工場内のリサイクルとしては期待が大きい技術のひとつである。  ところで日本の食糧自給率40%を向上すべきと叫ばれて久しいが、日本の食糧の一人1日あたりの供給カロリーが現在2600kcal(昭和35年は 2300kcal)であるのに対し、平均摂取kは2000kcal。海外の貴重な農地を使って作られた食糧を日本人は一人1日あたり600kcalも捨てているのである。主な理由は過剰生産である。コンビニやスーパーで棚が空いたり、売り切れになるのを恐れて、多め多めに納品する。厳しく設定された賞味期限が少しでも過ぎればそれはすべて捨てられる。コンビニエンスストアの横には毎日、弁当・惣菜の山ができる。環境にやさしい商品作りで一番大切なのはおそらく適正な製造量なのかもしれない。

2005年08月11日 09:13