「第27回日本臨床栄養学会総会」と「第26回日本臨床栄養協会総会」が、11月11~12日に神奈川県・パシフィコ横浜で開催された。 1日目には一般演題「食品の機能Ⅰ」で、獨協医科大学法医学教室・大村和伸氏が精製ナットウ菌培養物(NKCP)でヒトに対して血栓溶解のみならず血液の凝固阻害作用を確認したと発表。ナットウキナーゼであるSubtilisinとは異なる生理活性を示したことから、NKCPの主要活性成分を検索した結果、Bacillopeptidase Fというタンパク分解酵素の存在も明らかになった。 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用生命科学専攻ヘルスフード学科の発表では、マウスの遊泳実験の結果として、クレアチン単独投与群、L-カルニチン単独投与群、両者併用投与群では、各投与群において、コントロール群より遊泳時間が有意に増加していることが認められたと発表。ただし、単独投与と併用に有意差は見られなかった。血液中の乳酸濃度上昇はL―カルニチン投与群と併用投与群で抑制され、筋肉重量はクレアチン投与群と併用群で有意に増加している。ヒトでもほぼ同様の結果が出た。 また、(株)ファンケルが防衛医科大学内科学第一講座・楠原正俊助教授を招いて「発芽玄米摂取の高血圧症に対する有用性」と題し、ランチョンセミナーを開催した。発芽玄米には多岐にわたる効果が報告されているが、今回は発芽玄米摂取により血圧が抑制されることが確認された。試験は60代の軽症高血圧患者18名を発芽玄米摂取群とプラセボとして白米摂取群に分けた、4週間の二重盲験。その結果、発芽玄米群では収縮期血圧で145.6mmHgから 139.6mmHg、拡張期血圧で87.5mmHgから83.3mmHgと、プラセボ群に比べ血圧が有意に低下することが確認された。(株)ファンケルによると今回の試験は未だ継続されており、途中経過として報告がされた。 2日目には、「保健機能食品の捉え方と有効性・安全性」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。座長は本間康彦氏が務めた。最初に演壇に立った内閣府食育推進室の田中弘之氏は「よくトクホのヒト試験は何例くらい行えばいいのかと聞かれるが、画一的に何例と決めることは困難。少なくとも10 例程度では不可だ」と述べた。また、食品の摂取期間については、「血圧・脂質関係で3ヶ月以上必要」とし、「多重性の問題を念頭におき、ANOVA(分散分析)を用いるべき」とした。 次いで(財)東京都保健医療公社多摩北部医療センターの井藤英喜院長がトクホを審査する立場からトクホの問題点として、多種類のトクホを同時に用いることの効果・安全性がはっきりしていないこと、有効成分が特定されていても作用への寄与率が低いものがあること、本当に生活習慣病を防げるのかどうか長期使用の効果が不明であることを挙げ、今後さらに許可後のトクホを用いた長期追跡試験が実施されることが望ましいと語った。 関西医科大学付属病院栄養管理部・田嶋佐和子氏は、実際に患者に保健機能食品を使用する立場から講演した。トクホについては、副作用などがまだ分からずNNT(ある医学的介入を患者に行った場合、1人に効果が現れるまで何人に介入する必要があるか示す数字)がほとんど示されていないことを批判。栄養機能食品についても、個人の必要量が不明で、NNTを離すことが不可能なため、栄養士が各対象者のアセスメントを行いながら使用を進めることが必要であるとした。さらにメーカーからの情報がもっと必要だと主張した。 パネルディスカッションでは、「初期のトクホは再審査すべきではないか」という本間座長の問いに田中氏が「新たな知見が出れば、再審査ということになると思う」と応じた。同じく座長の「メーカーの立場から見て条件付きトクホは魅力的か?」という問いにはカルピス(株)健康・機能性食品開発研究所の相原浩太郎氏が「消費者の反応を見て魅力的か判断したい」と慎重にコメントした。また田嶋氏は「どのくらい摂取を続ければいいのかメーカーから情報を提供してほしい」と要望した。 一般演題「栄養補給・サプリメント」では、静岡県立大学大学院生活健康科学研究科の坂田とも子氏が「コエンザイムQ10投与による血液透析患者の酸化・抗酸化マーカーの変化について」と題し講演。心・血管合併症の発症には、酸化ストレスの亢進の関与が示唆されていることから、抗酸化作用を有する CoQ10を血液透析患者に投与し、血中のCoQ10濃度、蛋白質酸化生物(AOPP)、マロンジアルデヒド(MDA)、トータルの抗酸化能を表す ORACの変化について測定した。その結果、CoQ10投与により血中のCoQ10濃度は上昇し、それに伴いAOPP、ORACは減少した。ORACが減少した理由は、CoQ10投与により酸化ストレスが軽減し、その結果、抗酸化能を高く維持する必要がなくなったからではないかと推測され、血液透析患者へのCoQ10投与は、少なくとも一部の酸化ストレスの軽減に有効だと考えられた。 一般演題「アレルギーと免疫」では、オリエンタル酵母(株)の増田佳史氏が「パン酵母β―1,3/1,6―グルカン(BBG)の通年性アレルギーに対する効果の確認」と題し講演した。通年性アレルギー性鼻炎の疾患歴が3年以上で中等症以上のアレルギーのある16~46歳の男女42名に、試験食品をプラセボ群、低容量群(BBG100ミリグラム)、高容量群(BBG500ミリグラム)を無作為に割り当て12週間摂取させる二重盲検平行群間試験を行った。その結果、低容量群、高容量群ともに鼻症状(鼻をかんだ回数、くしゃみ発作)、鼻汁分泌量、鼻汁性状ともに有意な改善が見られた。安全性の評価も問題なく、1日100~500ミリグラムの摂取で通年性アレルギーに対する改善に効果があることが示唆された。
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