(株)TTC(本社東京都渋谷区)の山本哲郎代表取締役社長は、15日、(株)情報機構(本社東京都品川区、谷口彰敏社長)主催のセミナーで講演した。内容は「トクホ最新事情-非臨床からヒト試験、申請まで-」と題し、実際にトクホ取得を考える企業に対してのレクチャーとなった。 まず、特定保健用食品の許可取得までの流れを紹介。特定保健用食品への第一歩ともいえる関与成分の同定に関しては、「これが出来れば5~6割は前に進んだと考えてもよい」と、その重要性を強調。ただし、同定の方法は多種かつ専門性が高いため時間がかかるだけでなく、「食品は多成分で構成されており、何種類かの成分が相互に作用している。同定した1つの成分だけでは、食品全体を摂取したときほどの効果が得られないことも多い」とし、食品から関与成分を同定することの難しさを紹介した。 また、作用機序の解明については、「現行トクホでは必須条件だが、生命現象は複雑で一元的に動くものではなく、明確にするのは大変。解明されない場合には条件付きトクホとしての可能性は残るが、条件付きトクホの場合も考えられる作用機序を全て検討することが条件になっており、現行トクホ以上に時間と労力を要する場合もある」とし、さらに「作用機序が明確でないと、安全性について議論できないという理由で食品安全委員会から差し戻される可能性がある」とした。また、解明にはテクニカルな面が強く、経験と訓練をつんだ専門機関に依頼するのが最善とし、「大学へ社員を派遣しても、実際は教育体制が整っていないため、時間がかかり過ぎてうまくいかないケースもあると聞くので、注意が必要」と述べた。 安全性に関する問題としては、安全性に神経質になっている感があることに懸念を表明、「例えば医薬品との相互作用を明確にすべきとの要求もあるが、本来、トクホは患者を対象にしているものではない。全ての医薬品に対しての試験を行うのは事実上不可能に近い」との考えから、注意表示などで対応することを行政側に提案していると述べた。例えば、「○○関連の薬を飲んでいる方は、使用しないで下さい」などの表示で対応できるのではないかとした。 トクホ制度については、「新トクホと呼ばれる条件付きトクホは申請などの動きが全く見られず、規格基準型についてもいくらか問い合わせがある程度」と現状を紹介。条件付きトクホは「試験レベルもコストも、現行トクホと差がないため、既存の保健の用途での条件付トクホ申請は企業としてメリットは少ない。アレルギー関連など全く新規の分野で申請できれば、メリットがあるのではないか」とした。規格基準型に関しては、「同じ顔の製品しか出来ず、オリジナルの素材を活かせない」ことをマイナス面として挙げる一方、試験コストを抑えられ、審査時間が短縮されている等メリットもあると説いた。また、関与成分を複数含む場合、配合の量や方法、形態が規格を逸脱した場合は個別審査になることなどに注意を促した。結論としては、現行トクホがあくまで中心的存在であると予測し、新トクホの登場により、現行トクホの審査がより厳しくなる可能性も示唆した。 山本社長が今後のトクホで取得の可能性がある新たな保健の用途として考えているのは、花粉症や肌関連(保湿、美白、シミ・シワ、たるみなど)、免疫、眼精疲労、血流改善(むくみを含む)、前立腺肥大、脳機能、尿酸、変形性関節炎、歯周病などに関連するもの。注目されている疲労やストレスなどは、マーカーを1つに設定することが難しいため、困難な面もあるとした。また、トクホを取得する上で、医師会や製薬メーカーとの協調も大事であるとし、「学会などの支援を引き出すことが上手な方法」であると述べた。 現在、TTCでは、日本初の花粉曝露試験施設での臨床試験も行っており、その途中経過も報告された。
TTC山本社長がトクホ申請までをレクチャー
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