吉備国際大学准教授 玉利 光太郎は、高齢者の健康づくりのために実施されている筋力トレーニングと生活の質(QOL)との関係について、調査結果を発表しました。従来の調査はトレーニング効果の報告にとどまり、効果の出にくい高齢者の特徴などについてはよく分かっていませんでした。この調査の結果、筋力トレーニングを変形性関節症患者が利用した場合、生活の質(QOL)が落ちてしまう可能性が、関節症でない高齢者と比べて高くなることが分かりました。
【調査概要】
この調査は、早稲田大学エルダリーヘルス研究所の協力のもと、東京都内の8か所の介護予防教室(3ヶ月間開催)で137名の参加者を対象に実施されました。
筋力トレーニングの効果は、QOLを測る質問紙を用いて調査しました。この質問紙は教室前後の日常生活で、歩行や体の痛みなどの身体・運動機能と活力感や社会生活などの精神機能の心身両面の状態を8項目計36問で答えてもらう方式。その結果、痛みや精神機能については、60%以上が改善していたものの、運動機能については半数以上が不変、あるいは悪化していました。
さらに運動機能が悪化した原因を分析したところ、変形性関節症のある高齢者は、ない場合に比べて約6倍リスクが高いことが分かりました。また痛みや精神機能が改善した参加者は、糖尿病のない高齢者に多い傾向が認められました。
この調査を実施した玉利准教授は、
「高齢者の運動機能向上を目的として広く行われている筋力トレーニングをより安全に実施するための対策が必要。運動療法は関節症や糖尿病に対する有効な治療法のひとつだが、症状が強い場合や血糖コントロールが不良の場合は、医師、理学療法士など専門家によるモニタリングが重要ではないか。関節症などで痛みが強い方は頑張りすぎず、気持ち良く感じる程度に筋トレ実施を」と指摘しています。
この調査結果は、米国のリハビリ医学専門誌「Archives of Physical Medicine and Rehabilitation」9月号で発表されます。