株式会社 毛髪クリニック リーブ21(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:岡村勝正、以下リーブ21)は、近畿大学薬学部創薬科学科薬用資源学研究室(大阪府東大阪市、主宰:松田秀秋、以下近畿大学)と共同研究を行なってきました。その研究成果である「葛花(*1)の5α-リダクターゼ阻害作用と、毛成長促進作用」が、12月15日(木)「Journal of Natural Medicines Volume 66, Number 1 / January 2011」にて掲載予定です。
【研究背景】
リーブ21では、近畿大学と共同で「男性型脱毛(AGA)」の原因である5α-リダクターゼの阻害作用が期待される生薬・漢方に着目し、研究を行なってきました。2010年には、研究成果「葛花の抗男性ホルモン作用を介した育毛作用」を日本生薬学会第57回年会にて発表させていただきました。
【研究概要】
2010年発表の「葛花の抗男性ホルモン作用を介した育毛作用」では、葛花が男性型脱毛(AGA)の原因である5α-リダクターゼ阻害作用があることを確認しています。
この研究を基に実用化を目指すうえで、葛花より有効成分の抽出を行ない、6種類の成分のうち2種類(ソヤサポニンIとカイカサポニンIII)の構造を確認しました。また、この2種類のうちカイカサポニンIIIにより強い5α-リダクターゼ阻害作用があることも認められました。
さらに、男性型脱毛(AGA)以外への発毛効果を期待できるのではないと、マウスを用いた実験を行ない、その効果を初めて確認しました。
リーブ21では、本有効成分を商品開発に応用し、2012年の実用化を目指します。また、今後も大学との共同研究、自社研究所での研究を通じて、分子生物学から発毛のメカニズムを解明し、脱毛の根本的な解決を目指していきます。
【会社概要】
会社名:株式会社 毛髪クリニック リーブ21
代表取締役社長:岡村勝正
本社所在地:大阪府大阪市中央区城見2-1-61 ツイン21 MIDタワー22F
設立:1993年11月
資本金:40,000,000円
主要サービス:頭髪の発毛施術サービス
【近畿大学概要】
法人名:学校法人近畿大学
所在地:大阪府東大阪市小若江3-4-1
設立:1925年4月1日
代表者:理事長 世耕 弘昭
組織概要:13学部48学科、法科大学院と大学院11研究科、20の研究所等、2短大、併設学校18校園、総合病院3カ所
学生生徒数:52,006人(うち大学30,786人)
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【研究論文抜粋】
Abstract原文より
Crude drugs expected to have estrogenic effect were screened for inhibitory activity on testosterone 5α-reductase. Testosterone 5α-reductase is an enzyme catalyzing the conversion of testosterone to dihydrotestosterone, which possesses high affinity for the androgen receptor. Among the crude drugs tested, we focused on Puerariae Flos (the flowers of Pueraria thomsonii) due to its potent inhibitory activity and suitability for commercial use. The 50% ethanolic extract of Puerariae Flos (PF-ext) showed inhibitory activity of 60.2% at 500 μg/ml against testosterone 5α-reductase. Interestingly, it was more potent than that of Puerariae Radix (roots of Pueraria lobata). PF-ext also showed in vivo anti-androgenic activity using a hair growth assay in testosterone-sensitive male C57Black/6NCrSlc strain mice. We demonstrated saponins including soyasaponin I and kaikasaponin III to be active components in PF-ext. In addition, hair growth promotion activity in C3H/He mice at 2 mg/mouse/day of topical administration of PF-ext was demonstrated. Thus, Puerariae Flos is a promising crude drug for treating androgenic alopecia.
■要約
女性ホルモン作用が期待できる生薬を精査、収集し、テストステロン5α-リダクターゼ阻害作用を検討しました。5α-リダクターゼは、テストステロンを男性ホルモン活性の強い5α-ジハイドロテストステロン(DHT)に変換する酵素であり、脱毛症治療の標的になっています.試験した生薬の中から、阻害活性の強度と商業的に利便性が優れている点から、我々はPueraria thomsoniiの花である葛花に着目しました。葛花の50% エタノール抽出エキス(PF-ext)は500 μg/mLで5α-リダクターゼを60.2%阻害しました。興味深いことに、その活性は葛根(Pueraria lobataの根)よりも強かったのです。PF-extはテストステロンを処置したC57BL/6マウスを用いた試験において、育毛効果を示し、抗男性ホルモン作用があることが明らかとなりました(*2)。
PF-extの5α-リダクターゼ阻害活性成分を探索したところ、soyasaponin Iとkaikasaponin IIIに代表されるサポニン類であることを明らかにしました(*3)。加えて、C3H/Heマウスを用いた試験では、1日あたり2 mgのPF-extを塗布することで毛成長促進作用があることが確認できました。以上より、葛花は男性型脱毛症治療に期待のできる生薬であることが結論付けられました。
*1)葛花
マメ科のクズ(Pueraria thomsonii)の花を基原とする漢薬であり、古くから二日酔いの症状の予防・緩和に用いられてきました。その乾燥根は葛根(かっこん)と称され、風邪引きに汎用される葛根湯に配剤されています。
*2) テストステロン処置C57BLマウスを用いた、育毛効果の検討
C57BLマウス(7週齢、雄性)の背部の毛は、ヘアサイクルの休止期で停止していることが知られており、毛をバリカンおよびシェーバーで剪毛することで、次の成長期を強制的に誘導することができます。この時、男性ホルモンであるテストステロンを処置することで、成長期の誘導を遅延させることが可能です。この試験は、テストステロン処置後に生薬の検体を塗布することで、抗男性ホルモン作用を介した育毛作用を評価することができます。図は、剪毛後30日間テストステロンと葛花エキスを連続塗布し、経日的な毛成長スコアの推移を示しています。毛成長スコアは、全く毛成長が認められない状態を0、完全に生えそろった状態を5として目視で評価を行っています。テストステロン無処置群とテストステロン処置群を比較していただくと、テストステロン処置群の毛成長が非常に遅くなっており、テストステロンによる毛成長抑制が生じていることが確認できます。それに対して、テストステロンを処置した後に葛花エキスをマウス1匹あたり2 mg塗布した群および5 mg塗布した群は、濃度依存的にテストステロン処置群よりも毛成長が早くなっています。テストステロンによる毛成長抑制効果を打ち消したことにより毛成長が促進したと考えられるため、葛花エキスは、抗男性ホルモン作用を介した育毛作用をゆ有するとこが明らかになりました。
*3)葛花の5α-リダクターゼ阻害活性成分
5α-リダクターゼ阻害活性を指標に葛花から単離した成分は、6種になります。その内2種は、左図に示すようにオレアナン型サポニン化合物であるSoyasaponin IとKaikasaponin IIIであることが明らかとなりました。これらの化合物の5α-リダクターゼ阻害活性は今回が報告が初めてになります。