総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、化粧品国内市場のうちスキンケア、ベースメイク、ボディケア、ヘアケアの各カテゴリーについて、何らかの機能を訴求する化粧品を”機能性化粧品”と定義して、各機能別に市場を調査・分析し今後を予測した。その結果を報告書「機能性化粧品マーケティング要覧 2012」にまとめた。
<注目機能市場>
1.アンチエイジング【スキンケア】
訴求機能 2011年 前年比 2012年見込 前年比
リカバリー・プロテクト 3,321億円 103.4% 3,397億円 102.3%
ホワイトニング(アンチエイジング訴求) 781億円 105.8% 813億円 104.1%
アンチエイジング機能を訴求したスキンケア化粧品(洗顔料・クレンジング、化粧水、乳液、美容液、モイスチャー、マッサージ・パック)を対象とした。このうち、「リカバリー・プロテクト」は加齢によるシワ、タルミ、くすみなどの老化症状の抑制・改善(=リカバリー)や、30代前半までの老化初期症状の予防・改善(=プロテクト)を訴求したスキンケア化粧品、「ホワイトニング(アンチエイジング訴求)」は美白効果と共に老化症状の改善も訴求したスキンケア化粧品を対象とした。
[リカバリー・プロテクト]
ターゲット層の人口増加を背景にメーカー各社が注力しており、市場の拡大が続いている。一方、競合も激化しており、配合成分による差別化や剤型の目新しさを訴求して需要の取り込みが図られている。通信販売系メーカーや訪問販売系メーカーの中にはアンチエイジングブランドへ投資を集中し好調なメーカーもあるが、制度品系メーカー(※1)のノープリントプライス(※2)採用ブランドでは伸び悩みも見られる。
2011年は、通販系メーカーや訪販系メーカーが好調を維持したことに加え、百貨店をメインチャネルとして展開している外資系ブランドを中心にアンチエイジングの美容液やクリームを前面に押し出したことで需要を取り込んだことから、市場は前年比3.4%増の3,321億円となった。
2012年の市場は、前年比2.3%増の3,397億円が見込まれる。ポーラが新ブランド「D」を投入したほか、百貨店ブランドのスペシャルケアが引き続き実績を伸ばしていることが要因となっている。
市場の拡大は当面続くと考えられるが、後述する「ホワイトニング(アンチエイジング訴求)」との競合やマルチパーパスアイテムの台頭によるベーシックケアの縮小が懸念される。
※1:資生堂、花王、カネボウ化粧品、コーセー、P&Gマックスファクターなど、小売店と個別に販売契約を結び対面で販売を行うメーカー
※2:メーカー小売希望価格が表示されていない商品
[ホワイトニング(アンチエイジング訴求)]
これまで日焼けによるメラニン生成抑制を主体に展開していたホワイトニングにおいて、老化症状や色素沈着の改善といったアンチエイジング機能も複合訴求するブランドが増加している。特にカウンセリングでは、メラニン生成抑制からの訴求変更や新ブランドの投入が続いている。一方、セルフセレクションは、メラニン生成抑制に比べアンチエイジング訴求の展開ブランドが少なく拡大の余地がある。2011年の市場は前年比5.8%増の781億円となり、2012年は 前年比4.1%増の813億円が見込まれる。
カウンセリングでは2011年から2012年にかけて、「アスタリフト ホワイトニング」(富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー)、「B.A サマー」「B.A RED サマー」(ポーラ)など大型新ブランドの投入が相次いでいる。また、「ソフィーナ ホワイトニング」(花王)や「ホワイトショット」(ポーラ)がリニューアル時にメラニン生成抑制からアンチエイジングに訴求変更を行っている。セルフセレクションでは、2011年に「フレッシェル」「エビータ」(カネボウ化粧品)のマルチパーパスゲルが同年の市場を牽引したほか、「コラージュ」(持田ヘルスケア)も年齢敏感肌をコンセプトとしたホワイトニングラインを投入し好調に推移している。
2.地肌ケア(クレンジング)【ヘアケア】
2011年 前年比 2012年見込 前年比
368億円 125.2% 372億円 101.1%
健康な地肌と美髪を育むこと(=地肌ケア)やスタイリング剤・老廃物・汚れなどを洗い流すこと(=クレンジング)を訴求したヘアケア化粧品(シャンプー、リンス・コンディショナー、ヘアトリートメント、リンスインシャンプー、アウトバストリートメント)を対象とした。
「h&s」(P&Gジャパン)のヒットによって地肌ケアの重要性が広く浸透し、トイレタリーメーカー各社が上位ブランドやラインの主訴求を地肌ケアに変更したことで市場の拡大が続いている。2011年も、新たな訴求を打ち出した「アジエンス」(花王)や新ラインを投入した「モッズ・ヘア」(ユニリーバ・ジャパン)などの動きを受けて、市場は前年比25.2%増の368億円となった。
2012年は、「h&s」が配合成分のリニューアルを実施したが、その他の訴求変更や新ライン投入などが見られず、市場は微増となる前年比1.1%増の372億円が見込まれる。
3.スカルプケア【ヘアケア】
2011年 前年比 2012年見込 前年比
200億円 105.3% 214億円 107.0%
スカルプケア機能を訴求したヘアケア化粧品を対象とした。育毛剤を使用する前段階として頭皮ケア・洗浄を訴求した「育毛シャンプー・リンス」と、男性用を中心に清涼感を訴求した「トニックシャンプー・リンス他」に大別される。
2011年の市場は、前年比5.3%増の200億円となった。市場全体の8割近くを占めている育毛シャンプー・リンスは、近年「スカルプD」(アンファー)が成長の牽引役となっており、2011年は価格を引き下げたことでエントリー需要を取り込んだ。また、前年にマイナスとなったトニックシャンプー・リンスは、夏期の節電の影響で清涼感を求める需要を獲得して反転した。
2012年の市場は、前年比7.0%増の214億円が見込まれる。「スカルプD」がリニューアルを行いリンスとの相乗効果を謳っているほか、主要な販売チャネルがドラッグストアであるジャパンゲートウェイが20代からのスカルプケアを訴求した育毛シャンプー・リンスの新ブランドを積極的に投入していることで、前年以上の市場の拡大が予想される。一方、育毛剤の浸透を助けるという効果を訴求した育毛剤ブランドの育毛シャンプー・リンスは、これら好調なブランド、メーカーに需要を奪われて低迷が続くと考えられる。
<調査結果の概要>
2011年 前年比 2012年見込 前年比
化粧品全体 2兆2,730億円 99.1% 2兆2,769億円 100.2%
機能性化粧品 1兆7,326億円 99.6% 1兆7,373億円 100.3%
機能性化粧品市場は、化粧品市場全体(2012年7月30日プレスリリース公表)のうち、スキンケア、ベースメイク、ボディケア(除毛・脱毛料を除く)、ヘアケアの各カテゴリーを対象とし、ポイントメイク、ヘアメイク、フレグランスなどは対象外として算出した。
2011年の機能性化粧品市場は、前年比0.4%減の1兆7,326億円となった。ボディケア、ヘアケアは、ライフスタイル提案型ブランド(※3)が順調だったほか、トイレタリーブランドの高機能化による需要開拓、地肌ケアやスカルプケアの高機能シャンプーやアウトバストリートメントを中心とするトリートメントが好調だった。一方、スキンケアとベースメイクはマルチパーパスゲルやBBクリームといった複数の機能を併せ持つ製品投入が相次ぐ一方、スペシャルケアを中心にプレステージブランドが需要を集めるなど二極化が進行しており、構成比の大きいマスマーケット向けカウンセリングブランドが苦戦した。
東日本大震災も影響した2011年の反動から、2012年の機能性化粧品市場は前年比0.3%増の1兆7,373億円が見込まれる。スキンケア、ボディケア、ヘアケアは回復が見込まれるものの、ベースメイクはマスマーケット向けカウンセリングブランドの需要が回復しておらず、また、より安価な商品や複数の機能を兼ね備えたBBクリームへの需要シフトが続いているため、伸び悩む見通しである。
※3:「ザ・ボディショップ」(イオンフォレスト)、「ハウス オブ ローゼ」(ハウス オブ ローゼ)、「ラッシュ」(ラッシュジャパン)、「ロクシタン」(ロクシタン ジャポン)など
<調査方法>
富士経済専門調査員による対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査
<調査期間>
2012年7月~8月
以上
資料タイトル:「機能性化粧品マーケティング要覧 2012」
体裁:A4判 254頁
価格:100,000円(税込み105,000円)
PDF/データ版 110,000円(税込み115,500円)
書籍版・PDF/データ版セット 120,000円(税込み126,000円)
調査・編集:富士経済 東京マーケティング本部 第一統括部 第二部
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【関連資料】
◎リリースURL/PDF
http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/120925_12088.pdf