東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の山本順寛教授らの研究チームは、「小児線維筋痛症」※1が、コエンザイムQ10※2の欠乏によって起こることを、横浜市立大学医学部小児科との共同研究で明らかにしました。※3
■背景と目的
「線維筋痛症」は、全身の疼痛と慢性疲労を伴う原因不明の難病で、最近小児でも発症することが明らかになってきています。根本的な治療法はなく、ミトコンドリア機能不全による筋肉の酸化傷害が重要との説が有力とされています。そこで、横浜市立大学医学部小児科の協力のもと、小児の線維筋痛症患者の血漿酸化ストレスマーカー※4を測定し検証しました。
■成果
小児線維筋痛症の患者は、同世代の健常小児と比較して有意に血漿酸化ストレスマーカーが高いことが明らかになりました。またそれ以上に、血液中コレステロールが高く(高コレステロール血症)※5、コエンザイムQ10が少ないことが新たに発見されました。そこで、患者にコエンザイムQ10を投与したところ、高コレステロール血症の改善と疲労度の軽減が認められました。
■社会的・学術的なポイント
小児線維筋痛症患者の酸化ストレスが亢進していることが明らかになったことで、抗酸化物質による治療が注目されます。なかでも、同患者がコエンザイムQ10の欠乏症であること、またコエンザイムQ10の投与により、コレステロール代謝および疲労度の改善が認められたことから、同物質の投与が有望と考えられます。
※1 線維筋痛症:18箇所の圧痛点のうち11箇所で痛みを感じる場合線維筋痛症と診断される。全身の恒常的な痛み、全身疲労、不眠などを伴う。女性が男性よりも約7倍多く発症する。
※2 コエンザイムQ10:ミトコンドリアのATP生産に不可欠な因子として単離される。全身のあらゆる場所に存在し、ビタミンEやビタミンCと同等の重要な抗酸化物質と考えられている。
※3 本研究成果は、学術誌「Redo×Report 2013」に掲載されました。
※4 酸化ストレス:生体内の酸化反応と還元反応のバランスが崩れ、前者に傾く状態。様々な病気や老化のリスクが高まると考えられている。
※5 高コレステロール血症:血液中のコレステロール濃度が高い状態で、心臓病などのリスクが高くなる。
研究内容の詳細などこの件に関しての報道機関からのお問い合わせ先
■東京工科大学 応用生物学部教授 山本順寛
Tel.042-637-2918 / E-mail. junkan@stf.teu.ac.jp
※詳細は下記URLをご参照ください
◎東京工科大学 2013年7月16日発表
http://www.teu.ac.jp/press/2013.html?id=195