キユーピー株式会社は、東京海洋大学食品微生物学研究室との共同研究で、加熱変性リゾチームが、ヒトノロウイルス(※1)を破壊し、不活化することを確認しました。研究結果を「Nature」系列のWeb版総合科学誌「Scientific Reports」(※2)に投稿し、専門家による査読を経て7月2日に掲載されました。
リゾチームは、卵白などに含まれる細菌の細胞壁を溶かす酵素で、かぜ薬の成分などにも使用されています。キユーピーは、鶏卵成分の機能性の研究を進める中で、加熱変性リゾチームがマウスノロウイルスに対して高い不活化効果を示すことを突き止め、学会発表しています。
今回の論文では、これまでの成果に加えて、加熱変性リゾチームがマウスノロウイルスのみならず、ヒトノロウイルスも破壊することを報告しました。加熱変性リゾチーム溶液にヒトノロウイルスをさらした後、遺伝子を増幅させてウイルス粒子数を算出したところ、粒子数が検出限界以下となりました。この結果から、加熱変性リゾチームがヒトノロウイルスを破壊し、不活化することが示されました。
キユーピーでは、加熱変性リゾチームをアルコール製剤等の衛生用品に応用することを進めています。今後も、広く社会に求められる機能性素材の研究を進めていきます。
※1:ヒトノロウイルス
非細菌性急性胃腸炎や食中毒を引き起こす感染性微生物です。環境中での生存性が高い上に、わずか10~100粒子程度で感染するほど強い感染力を持つため、日本では冬場を中心に大流行を引き起こし社会問題となっています。
※2:「Scientific Reports」
米国ロイター社が毎年発表する雑誌の影響度を示すインパクトファクターを基準にした場合、総合科学誌の分野で世界5位の評価を得ています。2015年のインパクトファクターは5.578。インパクトファクターは、学術誌の影響度を評価する1つの指標で、数値が高いほど、雑誌に掲載されている平均的な論文が他の論文へ多く引用されたことを示しています。
【加熱変性リゾチームのヒトノロウイルスへの作用】
(試験) リゾチーム溶液を100℃-30分の条件で加熱変性処理し、最終濃度が1%になるよう、ヒトノロウイルス溶液と混和した。1分間および1時間静置したのち、Real-time PCRを用いてウイルス粒子数を算出した。
(結果) 混和後のヒトノロウイルス遺伝子量は、対照(蒸留水と混和)と比較して1分後で約4分の1に、1時間後には検出限界以下となった。
【図】混和1時間後に測定した、ヒトノロウイルスの遺伝子量
加熱変性リゾチームにより、ヒトノロウイルス遺伝子量が
検出限界(3000/ml)以下となった。
※詳細は下記URLをご参照下さい
◎キユーピー株式会社 2015年7月7日発表
http://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2015/47.html
◎キユーピー株式会社
http://www.kewpie.co.jp/