森永乳業株式会社は、米国・ミシガン大学との共同研究から、ラクトフェリンがヒトノロウイルスのヒト細胞への感染を抑制することを世界で初めて観察しました。今回の研究成果は、2019年にペルーで開催される第14回国際ラクトフェリン会議にて、ミシガン大学のChristiane Wobus(クリスティアーネ・ウォバス)准教授が発表する予定です。
◆研究の背景と目的
ラクトフェリンはヒトなどの哺乳類の乳汁や唾液などに含まれるタンパク質で、さまざまな病原体に対して感染防御作用を示すことが報告されております。
ヒトノロウイルスは冬季の感染性胃腸炎の主要な病原体で、腹痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。これまでの臨床研究から、ラクトフェリンの摂取がヒトノロウイルスなどによる冬季の感染性胃腸炎の発症を抑制することが報告されております。しかし、ヒトノロウイルスを人工的にヒト細胞に感染させることは大変難しく、そのメカニズムは良く分かっておりませんでした。米国・ミシガン大学のChristiane Wobus准教授の研究グループは、世界的にも数少ないヒトノロウイルスを人工的にヒト細胞に感染させることができる研究グループの1つです。
森永乳業では、2016年よりミシガン大学との共同研究で、ラクトフェリンがヒトノロウイルスのヒト細胞への感染に与える影響について検討してきました。
◆研究の内容
ヒトの下痢便由来のヒトノロウイルス(GII.6株)をヒト細胞(B細胞株BJAB細胞)に感染させる際に、ラクトフェリンを添加して培養しました。培養終了後、培養液に含まれるウイルスRNA(遺伝子)を抽出し、定量RT-PCR法でウイルスRNA量を測定しました。また、ヒト細胞内でウイルスが複製する際に生じる2本鎖RNAに蛍光標識抗体を結合させ、フローサイトメトリー法で検出しました。
◆主な結果の概要
1.培養液に含まれるウイルスRNA量の減少
培養液に含まれるヒトノロウイルスのウイルスRNA量は、ラクトフェリンの添加により有意に減少しました。
2.ヒト細胞内で複製中のウイルスの観察
ヒト細胞内でヒトノロウイルスが複製する際に2本鎖RNAが生じます。この2本鎖RNAに対し抗体を用いて蛍光標識した結果、ヒトノロウイルスのみ添加したヒト細胞と比較して、ヒトノロウイルスとラクトフェリンを添加したヒト細胞では蛍光量が低下しました。
◆まとめ
以上の結果から、ラクトフェリンが、ヒトノロウイルスのヒト細胞への感染を抑制することが観察され、ヒトでも同様のメカニズムにより冬季の感染性胃腸炎の発症を抑制している可能性が示されました。
森永乳業は、ラクトフェリンに関する研究を重ね、体調を崩しやすい季節の身体の健康維持に貢献します。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・森永乳業株式会社 2018年12月10日発表(ニュースリリース)
・森永乳業株式会社 ホームページ