新コンセプト素材「トマト種子エキス」のアレルギー性皮膚炎改善効果を新規に発見、特許出願/オリザ油化

オリザ油化株式会社は、このたび 2018 年 10 月に上市した新製品「トマト種子エキス」の新たな機能性としてアレルギー性皮膚炎の改善効果を見出し、特許を出願した。同社では 2018 年の上市にあたり、トマト種子エキスの主要成分としてサポニン化合物であるリコペロサイド A および Hが含まれていることを発見するとともに、エキスおよびサポニン成分の皮膚細胞外マトリックスの主要構成因子であるコラーゲン、エラスチンの産生促進作用ならびにそれらの分解物の線維芽細胞への取り込みに関与する遺伝子発現促進作用を見出していた。

これらの効果は主に皮膚内側の真皮における効果であったが、今回、皮膚外側の表皮における効果についても検証した。マウスを用いた実験の結果、掻痒モデルの引っ掻き回数の減少および耳介 PCA 反応評価によって抗原抗体反応によるアレルギー反応の抑制が確認された。一方、ヒト皮膚 3D モデルを用いた実験の結果、皮膚の保湿において重要とされるフィラグリン遺伝子および角層セラミドの合成において重要な役割を果たすセラミドシンターゼ 3 遺伝子発現がトマト種子エキスおよびリコペロサイド類によって増加することを見出した。さらに、ヒト皮膚 3D モデルの TEWL（水分蒸散量）がトマト種子エキスおよびリコペロサイド類の添加によって改善することも確認した。同社では、これらのトマト種子エキスに関する新規知見について特許出願を完了した。

アレルギー性皮膚炎とは、体外の異物に対するアレルギー反応を原因とする皮膚の炎症である。皮膚の乾燥及びバリア機能の低下によって異物（抗原）が皮膚内に侵入しやすくなり、侵入してきた異物に対しての免疫反応が起こり、痒みの発生や皮膚炎を引き起こす。よって、抗原が皮膚内に侵入しないように皮膚の水分量およびバリア機能を保つこと、侵入してきた抗原によるアレルギー反応を緩和することは、アレルギー性皮膚炎を改善するにあたり重要であるといえる。

皮膚の水分保持には様々な因子が関与しているが、中でもフィラグリンとセラミドは特に重要な因子として知られている。これらはアレルギー性皮膚炎発症者の皮膚において著しく減少していることがわかっており、皮膚中のフィラグリンやセラミド含量を増加させることによってアレルギー性皮膚炎症状である皮膚の乾燥を緩和できると考えられる。そこで同社は、トマト種子エキスおよびエキスの主要成分であるリコペロサイド A および Hのヒト皮膚 3D モデルにおけるフィラグリン遺伝子およびセラミド合成に関わるセラミドシンターゼ 3 遺伝子発現に及ぼす影響を調べるとともに、3D モデルの TEWL への影響を調べることで皮膚の水分保持力に及ぼす影響を検証した。
その結果、フィラグリン遺伝子およびセラミドシンターゼ 3 遺伝子の発現がトマト種子エキス、リコペロサイド A および H の添加によって有意に増加した（図 1 および 2）。さらに TEWL 測定の結果、トマト種子エキス、リコペロサイド A および H を添加した群の TEWLが対照群と比較して有意に低下した（図 3）。これらの結果より、トマト種子エキスおよびリコペロサイド類は皮膚の保湿因子の発現を増加させることによって皮膚の水分保持力を増加させることが示された。

一方、アレルギー反応の抑制はマウスを用いた試験によって評価した。まず、マウス掻痒モデルにトマト種子エキスおよびリコペロサイド H を経口投与し、痒みによる引っ掻き行動を抑えるか検証した。その結果、トマト種子エキスおよびリコペロサイド H の投与によって引っ掻き回数が対照群と比較して減少する傾向を示した（図 4）。また、抗原抗体反応を評価する際に用いられるマウス耳介 PCA 反応を抑制するか検証した結果、トマト種子エキスおよびリコペロサイド H の経口投与によって、抗原抗体反応の有意な抑制が確認された（図 5）。

以上の結果より、アレルギー反応に対して抑制作用を示し、皮膚の乾燥を緩和する作用を有することがわかった。よって、アレルギー性皮膚炎症状に対して有効性を示す可能性が示唆された。

同社では、これらのデータを特許出願し、これまでに見出していた真皮へ働きかける効果による肌の弾力ケア作用だけでなく、表皮へ働きかける効果によるアレルギー性の皮膚症状（ドライスキンなど）改善効果の 2 つの側面を合わせ持つ新たなコンセプトの美容素材として、他の同種素材との差別化を図っていく予定である。また、同素材は食品用素材としてだけではなく、塗布目的のスキンケア化粧品素材としてもアピールしていく予定である。