オリザ油化株式会社は、2016 年に世界に先駆けて上市したパッションフラワーを原料とするヒット商品である「パッションフラワーエキス」及び「コスメハーベスト®パシフローラ」が時計遺伝子発現作用の他に、新たに皮膚バリア機能で重要な働きを担っているフィラグリン(Fillagrin)、インボルクリン(Involucrin)、PPARα、PPARγ遺伝子発現作用を有し、更に色素沈着に関わるエンドセリン遺伝子発現抑制作用を有する旨について特許取得したことを発表した。
即ち、ヒト表皮角化細胞 NHEK に「パッションフラワーエキス」を添加して定量型リアルタイム PCR 法によりフィラグリン(Filaggrin)、インボルクリン(Involucrin)、PPARα、PPARγの mRNA 発現量を調べた結果、「パッションフラワーエキス」を添加することにより、フィラグリン、インボルクリン、PPARα、PPARγの mRNA 発現量が増加すること、いわゆる遺伝子発現作用が確認された(図 1~図 3 参照)。これにより、「パッションフラワーエキス」に皮膚バリア機能を有することが確認された。
また、ヒト表皮角化細胞 NHEK に「パッションフラワーエキス」を終濃度 100 μg/mL、300 μg/mL になるように添加し、24 時間培養し、その後、50 mJ/cm2 の UVB を照射した。照射後、さらに 24 時間培養した。その後、定量型リアルタイム PCR 法によりエンドセリン(Endothelin)の mRNA 発現量を調べた。
その結果、UVB 照射により、角化細胞において「パッションフラワーエキス」を添加していないもの(control)ではエンドセリンの mRNA 発現量が増加したが、「パッションフラワーエキス」を 300 μg/mL 添加した場合、control と比較してエンドセリンの発現量が減少した。これにより、「パッションフラワーエキス」にメラニンによる色素沈着を抑制する作用を有することが確認された(図4)。
ここで、フィラグリン(Fillagrin)とは、表皮の顆粒細胞で産生される塩基性タンパク質の一種であり、皮膚のバリア機能に欠かすことのできない角質層を形成するにあたり、ケラチンとともに重要な役割を担っているタンパク質である。前駆体のプロフィラグリンとして生合成され、角質層が形成される段階で、リン酸プロフィラグリンが脱リン酸化と限定加水分解を受けて分解し、フィラグリンが作られることが知られている。一方,インボルクリン(Involucrin)は角質のバリア機能に主要な役割を果たしている小器官であるコーニファイドエンベロープ(CE)の形成に寄与している。このようにフィラグリンやインボルクリンは皮膚のバリア機能において,重要なタンパク質である。
また、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体:peroxisome proliferators-activatedreceptor(以下 PPAR と表す)は、これまでに 3 つのサブタイプ(α、γ、β/δ)が同定されており、脂肪酸代謝やその輸送に関わる遺伝子、コレステロールや中性脂肪の代謝に関連する遺伝子発現を制御していることが知られているが、PPARαは皮膚のバリア機能や脂腺細胞の活性化に関与しており、PPARγは脂腺細胞の分化に関与しているなど、皮膚との関連が深いことも知られている。
さらに、エンドセリンは、血管以外の種々の組織細胞で産生され、紫外線が肌にあたると、エンドセリンが産生されることが報告されている。産生されたエンドセリンは、表皮色素細胞(メラノサイト) に働きかけ、シミ、そばかすの原因となるメラニンを盛んに合成させる。従って、表皮角化細胞からのエンドセリン産生量を抑制することができれば、メラニンの過剰な合成を抑え、シミやそばかすなどの色素沈着を治療または予防することができると考えられる。この特許は、「パッションフラワーエキス」がこれら皮膚バリア機能に関係するフィラグリン等の遺伝子発現促進作用を有すること、及び色素沈着に関わるエンドセリン遺伝子発現抑制作用を有することを技術的特徴とするものである。
オリザ油化は、パッションフラワーエキスを原料とする商品として 2016 年に食品素材「パッションフラワーエキス」及び化粧品素材「コスメハーベスト®パシフローラ」を上市し、これらは、日本のみならず世界で数々の採用実績を持っている。今回の特許の取得により、これらの商品自身の位置づけが更にランクアップし、国内外の健康食品、機能性表示食品はもちろん、一般食品、飲料分野、化粧品分野への更なるグローバルな拡販が期待できる。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・オリザ油化株式会社 2021年7月14日【PDF】発表
・オリザ油化株式会社 公式サイト