ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社は、以前から研究している真皮線維芽細胞の核について新たに以下 2 点を見出しました。
(1) 核膜異常を起こした線維芽細胞の影響で周囲の線維芽細胞のコラーゲン分解酵素が増えること
(2)加水分解コメヌカエキスとカモミラエキスの組み合わせが核膜異常の原因となる因子を減らすこと
今回の発見を活用することで、核膜異常を原因とするシワを抑制することが期待できます。この知見は 2022 年8 月 6~7 日に開催された第 40 回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて発表しました。また、今後ポーラ・オルビスグループの商品やサービスに活用されます。
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■ 核膜異常は肌の老化に関与する
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ポーラ化成工業では表情変化とシワの関係性に着目し、細胞の核膜異常(図 1)が皮膚の状態に与える影響について解明してきました。これまでに、真皮線維芽細胞に表情の動きを模した伸縮刺激を加えることで核膜異常が起き、核の変形が生じること、また核膜異常による核の変形が起きた細胞では真皮を構成するコラーゲンを分解する酵素が増えることを明らかにしています※1。
一方、老化した細胞が炎症因子を出して周囲の細胞の老化を促進するなど、何らかの問題を抱えた細胞があると、周囲の細胞にまで連鎖するように悪影響が及ぶ例が知られています。このことから、伸縮刺激等で核膜異常が起こった場合においても、周囲の細胞が悪影響を受けている可能性があると考えました。たった一つの細胞の異常でも、その影響が周囲にまで広がれば、シワの発生に大きな影響を与える可能性があります。そこで核膜異常が起きた細胞が周囲の細胞に与える影響について研究を行いました。
※1 「『党参抽出物加水分解液』に核の変形を抑制する効果を発見 『ボタンエキス』に核の変形による“真皮成分の分解”を抑制する効果を発見」
(2013 年 10 月 28 日)http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20131028.pdf
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■ 核膜異常が周囲の細胞のコラーゲン分解酵素を増加させる
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核膜異常が起きた細胞が周囲の細胞に与える影響を調べるため、人為的に核膜異常を起こした細胞の培養液を、正常な線維芽細胞に添加する実験を行いました。その結果、核膜異常を起こした細胞の培養液を添加された線維芽細胞では、コラーゲン分解酵素が増えることがわかりました(図 2)。皮膚の伸縮刺激が加わるシワ部位では、真皮線維芽細胞の核膜異常が生じやすいとされています。したがってシワ部位では、核膜異常が起きた細胞でコラーゲン分解酵素が増えるだけでなく、そこから連鎖するように、周囲の細胞でもコラーゲン分解酵素が増加することで、より肌の老化が進みやすい状態となっていると考えられます。
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■ 核膜異常の原因となる因子を減らすエキスを発見
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コラーゲン分解酵素の増加を抑制するため、原因である核膜異常を改善したいと考えました。核膜異常の原因となる因子を減らすことができる素材を探索した結果、加水分解コメヌカエキスとカモミラエキスの組み合わせに、その効果を見出しました(図 3)。この結果から、これらのエキスの組み合わせは伸縮刺激等による核膜異常を改善し、その結果、周囲の細胞も含めたコラーゲン分解酵素の増加を抑える効果が期待されます。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・ポーラ化成工業株式会社 2022年8月25日【PDF】発表
・ポーラ化成工業株式会社 公式サイト