大正製薬株式会社は、健康データの解析により中高年者の脚の筋力維持にタウリンが寄与する可能性があることを見出しました。
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■ 背景
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新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に移行したことで、イベントや野外での活動などが新型コロナ発生前の日常に戻りつつあります。一方で、長期間にわたるコロナ禍での行動制限により、体力や筋力が落ちたと感じている中高年の方も多くいらっしゃるようです。スポーツ庁の調査でも、65歳から79歳の高齢者の体力は2019年まで上昇傾向でしたが、コロナ禍の2020年以降低下しました(図1)。その要因の一つとして、コロナ禍で外出頻度が減少したことが挙げられています。
こうした背景から同社では、加齢、運動不足、コロナ禍等に伴う体力低下に着目し、それを抑制する方法を検討しています。今回、体力の項目の中でも、特に運動や社会参加に影響する『脚の筋力』と同社が長年研究を行っている『タウリン』の関係性について検討しました。
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■ 研究成果
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筋力とタウリン摂取に関し、高用量(1,000mg/日 以上)のタウリンを短期的に摂取した際の影響を評価する研究は多くあります。一方、食事由来のタウリン摂取(平均100~300mg/日)の長期間にわたる筋力への影響はほとんど報告がありませんでした。そこで今回、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが保有するデータを解析することにより、その関係性を検討しました。
その結果、40歳以上を対象に8年間の体力変化とタウリン推定摂取量の関係を評価したところ、タウリン推定摂取量が多い人ほど筋力を維持していることが分かりました(図2)。
また、65歳以上に限定すると、タウリン推定摂取量が多い人は8年間における筋力低下が半分程度に抑制されていました(図3)。
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■ 研究成果のまとめ
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今回のデータ解析により、中高年者の筋力維持にタウリンが寄与する可能性が示唆されました。食事由来のタウリンの多くは、魚介類から摂取されているため、人によっては摂取量が少なくなりがちです。日々の運動と共に、積極的にタウリンを摂取することが、筋力維持のサポートになると期待されます。なお、同成果は2023年6月16日(金)~18日(日)に開かれる第65回日本老年医学会学術集会で発表予定です。
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■ データ解析方法
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・使用データ
国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)1)の第3次調査(2002~2004年)と第7次調査(2010~2012年)
・解析対象者
両調査共に参加した愛知県在住の40歳以上(第3次調査時点)で、膝伸展筋力(脚の筋力)評価と食事調査を行った男女のうちタウリン配合ドリンク剤摂取者を除いた1,154人
・食事由来タウリン推定摂取量の算出
文献値等をもとに5食品群(藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類)について食品中のタウリン含量表を作成し、写真撮影を併用した連続する3日間の食事秤量記録調査記録を基に算出
・解析方法
膝伸展筋力の8年間変化量と第3次調査時の食事由来タウリン推定摂取量を用い、一般線形モデル、傾向検定にて解析(有意水準:両方の解析方法でp<0.05)
・調整変数(解析の際に、影響を取り除くように調整した項目)
身長、体重、性、年齢、喫煙歴、膝伸展筋力(第3次)、教育歴、CES-D(うつ指標)、既往歴(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、脳卒中、虚血性心疾患)
・グラフの作成方法
タウリン推定摂取量データを小さい順に並び替えて人数が3等分になるよう群分けし、各群の膝伸展筋力の平均値(棒グラフ)と標準誤差(エラーバー)を表示
国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA):愛知県大府市・東浦町の地域住民から性・年代別に層化無作為に選出された40歳以上の中高年者を対象に、医学・心理・運動・身体組成・栄養など多角的な観点から老化・老年病予防策を検討するコホート研究(同じ人を長期にわたって繰り返し調査する研究)。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・大正製薬株式会社 2023年5月9日発表
・大正製薬株式会社 公式サイト