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実は怖い、ぜん息の新しい診断法

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風邪が治ったと思ってもなぜか咳だけは止まらない――。グッと冷え込み、昼夜の寒暖差が激しくなってきた。マスク姿の人が増加するなど、風邪をひきやすいシーズンが到来したが、治療後も長引く咳は、ぜん息の可能性もあるだけに注意が必要だ。そうした中、ぜん息の新しい診断法が注目を集めている。

風邪の症状が治まった後も続く咳。その時点で、それがぜん息であると思う人はあまりいないかもしれない。しかし、実は3%もの人が、いわゆる大人のぜん息にかかっているといわれる。決して他人事ではない。さらに、突然の窒息死をも引き起こすことがあり、軽く考えていると取り返しのつかないことになりかねない。

やっかいなのは、その原因が、多くのぜん息を引き起こすとされるアレルギー原因物質が不明のため、なかなか判明しない点。死に至る場合の多くが、不十分な発作の軽重の見極めともいわれているだけに、その診断法の確立が、望まれている。

和歌山県立医科大学・一ノ瀬正和教授(呼吸器内科学第三講座)は、呼気中のNO(一酸化窒素)濃度に着目した、ぜん息の新しい診断法を提唱する。気道に炎症が起きると気道上皮や好酸球でNOを産生する酵素が増えNO濃度が上昇する。そのため、呼気中のNO濃度を測定することで、ぜん息の診断につながるとの理論だ。

従来は、気道の炎症状態の評価として、炎症時に増加する好酸球を測定するため、痰をとっていたが、痰の出る人は数%で、現実的ではなかった。NO濃度を測定する方法では、確実に測定できることに加え、これまでは困難だったせきぜん息の診断にも有効で、早期の治療にも貢献するだけに潜在患者も多い疾患にあって、その注目度は高まっている。

測定に使うのは、大掛かりな呼気ガス検査装置のほか、スウェーデンのメーカーからはハンディタイプのものが開発されている。比較的手軽に導入できる同機は現在、国内では薬事申請中だが、すでに個人輸入で導入している医療機関もある。使い方は、(1)息を吐いた状態でマウスピースを加え、大きく息を吸い込む(2)最大限吸い込んだところから一定速度で吐く(3)機器の画面で吐く速度を確認しながら約6秒の呼出で検査終了。

 

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診断法が進展し、治療薬においても一剤でぜん息の病態である気道炎症と気道狭窄の両方に効果を示すドライパウダー式の配合剤が発売されるなど、実は怖いぜん息を取り巻く治療環境は、着実に前進している。「ただの咳」、と思う前に「まず診断」、がつらい思いに苦しまない、とりあえずの最短距離といえそうだ。

 

2010年11月19日 17:44