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iPS細胞の皮膚科学研究の皮膚科学研究への応用に着手/コーセー

株式会社コーセーは、元京都大学 iPS 細胞研究所 特任教授で現コーセー研究顧問の加治和彦と共に、同一供与者から異なる年齢で得られた皮膚線維芽細胞より iPS 細胞を作製し、解析・評価しました。その結果、老化過程の痕跡である短縮した「テロメア」が供与年齢に関わらず回復していることを明らかにしました。この研究成果を 10 月 27 日から 30 日までフランス・パリにて開催される「第 28 回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)」世界大会にて発表します。

■“初期化”によって老化した全ての細胞の「テロメア」が回復■
iPS 細胞(人工多能性幹細胞)は、様々な組織や臓器の細胞に分化し、ほぼ無限に増殖する万能性をもった幹細胞です。ヒトの皮膚などの体細胞に遺伝子などの特定因子を導入し、培養することで、分化した細胞から未分化の多能性幹細胞に“初期化”することができます。一方、”老化の過程は不可逆的“であり、老化は細胞レベルでも進行することが知られています。同社では、老化した細胞が初期化されたとき、どの程度回復されるか、という点に着目しました。

老化の指標としてよく知られているのが、細胞の染色体の両端にある「テロメア」と呼ばれる構造です。「テロメア」は、細胞分裂を繰り返すと共に短くなり、ある限界を超えて短くなると細胞分裂が止まってしまいます。今回の研究では、細胞の初期化によって、老化した細胞の「テロメア」が回復可能かを調べました。

本研究で用いた iPS 細胞は、同一供与者より異なる年齢(36~67 歳)で得られた線維芽細胞から、京都大学 iPS 細胞研究所と加治研究顧問が共同で作製したものです。「テロメア」の長さを比較するため、iPS 細胞とそれらの元となる線維芽細胞を用いて評価を行いました。その結果、36 歳から 67 歳までの間に線維芽細胞の「テロメア」の長さは次第に短縮しますが、初期化された iPS 細胞の「テロメア」は、いずれの供与年齢においても、長さが回復していることが明らかとなりました。

■iPS 細胞からケラチノサイト からケラチノサイト ケラチノサイト(表皮細胞)の分化に成功■
さらに、36 歳から 67 歳までに得られた、すべての線維芽細胞から作製した iPS 細胞をケラチノサイトに分化させることに成功しました。このことから、異なる細胞に分化するという iPS 細胞の特性は、細胞の供与年齢に関わらず、正常に機能することが確認されました。つまり細胞に刻まれた老化の痕跡は、初期化の過程で取り除かれ、iPS 細胞の機能にも影響を及ぼさない可能性が示唆されました。 今後の展望としては、iPS 細胞化と供与者の加齢について、遺伝子レベルでの知見を蓄積することで、老化過程の再現やメカニズムの解明が進むことが期待されます。また、iPS 細胞やそれを分化させた細胞を用いることで、老化研究の領域だけでなく、皮膚の生理機能解析や化粧品成分の評価系の確立、動物実験代替法への応用などに広げることが可能となってきます。コーセーでは、次世代の化粧品の開発へと応用していくため、iPS 細胞について、より深化した研究を進めていきます。

■iPS細胞とは
iPS 細胞(人工多能性幹細胞)は、様々な組織や臓器の細胞に分化し、ほぼ無限に増殖する万能性をもった幹細胞です。ヒトの皮膚などの体細胞に遺伝子などの特定因子を導入し、培養することで、分化した細胞から未分化の多能性幹細胞に初期化することができます。 iPS 細胞は、2006 年に世界で初めて京都大学山中伸弥教授らによって作製され、この功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。iPS 細胞の研究が進むことで、病気の原因の解明、新薬の開発、細胞移植治療などの再生医療に活用できると期待が高まっています。

■テロメアとは
テロメアは、細胞の染色体の両端に見られる一定の塩基配列の反復構造を指します。細胞分裂を繰り返すと、次第に短くなり、ある限界を超えて短くなると細胞分裂が停止することが知られています。このことから、テロメアはたびたび、回数券に例えられます。環境ストレスなどにより生じる活性酸素によりテロメアの短縮化が促進されることが見出されており、細胞レベルの老化指標として注目されています。

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※詳細は下記URL(PDF)をご参照ください
◎ 株式会社コーセー 2014年10月15日発表
http://news.kose.co.jp/pdf/news/20141015.pdf

◎ 株式会社コーセー 公式サイト
http://kose.co.jp/jp/ja/index.html

2014年10月16日 13:35

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