森永製菓株式会社では、健康機能に注目が集まる「カカオの機能性」の研究を進めています。今回、カカオフラバノール 30 mg を含むココアを飲むことで、指先の血流量、皮膚温度、手の冷えの感覚にどのような影響が及ぶかをヒト試験において検証し、『皮膚血流量』、『皮膚温度』と『指先の冷えの感覚』のスコアが改善することが認められました。
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■ 研究の背景と内容
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ココアには、飲むと「からだが温まる」、「手足の冷えがやわらぐ」などの経験談がありました。しかし、これまでは科学的な検証や裏付けは十分なされていませんでした。今回は、ココア飲用後、手先の血流量、皮膚温度、体感としての冷えの感じ方にどのような影響が及ぶかについて、自治医科大学医学部の間藤卓教授監修の下、健常な成人男女を対象としたヒト試験により検証を行いました。
▲研究結果一例:平均的な皮膚温度変化を示した測定画像例(図1)
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■ 研究概要
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[実施時期]2021 年7月
[対象者] 20 歳以上 60 歳未満の健常な男女 27 名(最終解析対象者 24 名)
[試験食品]カカオ分 70%の調整ココア粉末 20g をお湯 120 mL に溶かしたもの(1 杯当たりカカオフラバノール 30 mg 含有
[対照食品]ココア風味粉末 20g をお湯 120 mL に溶かしたもの(1 杯当たりカカオフラバノール 0 mg)
[試験期間]単回摂取
[試験方法]ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験
[試験項目]レーザー光による皮膚血流量、サーモグラフィーカメラによる皮膚温度、体感 VAS アンケート
この研究では、日ごろ手足の冷えを感じやすいと自覚する健常な成人男女 27 名を対象に、環境を一定に調節した恒温恒湿室内(室温 23℃±1℃、湿度 40%±5%)で実施しました。試験食品は、カカオポリフェノールの中で機能性が注目されているカカオフラバノール 30mg を含むココア 20g をお湯 120 mLで溶かしたココア、またはカカオフラバノールを含まないエネルギー、タンパク質、脂質を同一に調整したココア風味飲料(プラセボ)を同量、同じ温度で飲用してもらいました。測定は、親指を除く左手の指先の血流量と温度を、それぞれレーザー血流計、サーモグラフィーカメラを用いて 10 分間隔で飲用後 60 分まで測定しました。体感は VAS アンケート法*により 20 分間隔で評価しました。試験はクロスオーバー試験法として 2 日以上の休止期間をあけた後、試験食品を入れ替えて同様に実施しました。試験参加者の途中辞退や計画からの逸脱のあった 3 名を除く 24 名の結果をもとに、ココア飲用時とプラセボ飲用時とを比較し、統計的な有意差があるか解析を行いました。
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■ 研究結果・考察
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この結果、健常な成人男女において、カカオフラバノール 30mg を含むココアの飲用により皮膚血流量が 40-60 分の間有意に高まることが明らかとなりました(図2)。また、皮膚温度もココア飲用において有意に高く推移することが確認されました。図1は、平均的な皮膚温度変化を示した試験参加者の測定画像例で、測定後半にかけてココアの飲用時には赤みが維持されている(=温度が高い)ことがわかりました。VAS アンケート法による冷えに関する感覚の評価では、ココア飲用 60 分後に「指先の冷え」の有意な改善が認められました。
このことから、カカオフラバノール 30mg を含むココアの飲用は、指先の血流量と皮膚温度を高め、冷えの感覚をやわらげると考えられました。また、当内容は査読付き学術誌「薬理と治療(2021 年 49 巻 10 月号)」に、「フラバノール含有ココア摂取による皮膚血流と皮膚温度に及ぼす効果-ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験-」として論文掲載されました1)。
*:visual analogue scale(VAS)法による感覚の数値化
図2 指先の皮膚血流の変化(平均値±標準誤差 P 値は 0.05 未満で両群間に統計学的有意差あり)
森永製菓では、これまでも、抗インフルエンザウイルス効果 2)、抗歯周病菌効果 3)、便臭改善効果 4)、ウォーミングアップ後の柔軟性に対する効果 5,6)、認知機能の一部である記憶力や判断力の維持・改善7)などを報告してきました。今後もココア並びにカカオに関する健康機能研究に継続的に取り組みます。
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■ 参考文献
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1) 稲垣ら. フラバノール含有ココア摂取による皮膚血流と皮膚温度に及ぼす効果 -ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験- 薬理と治療,49(10)1697-1704 (2021).
2) Kamei M. et al. Anti-influenza virus effects of cocoa. J Sci Food Agric.,96:1150(2016).
3) Hirao C. et al. Antibacterial Effects of Cocoa on Periodontal Pathogenic Bacteria. J. of Oral Biosciences.
52:283(2010).
4) 杉山ら. カカオ由来リグニンによる便通および便臭改善の検証試験 -無作為化二重盲検クロスオーバー試験―薬理と治療,45,653(2017).
5) 今田ら. ココア摂取が高齢者におけるウォーミングアップの効果に及ぼす影響 -プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験-薬理と治療,46,599(2018).
6) 大久保ら. ココアがウォーミングアップ後の柔軟性に与える影響 -プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験- 薬理と治療,46,609(2018).
7) 山本ら. ココア摂取による認知機能へ及ぼす効果 -ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験薬理と治療,47,1655(2019).
【詳細は下記URLをご参照ください】
・森永製菓株式会社 2021年11月9日【PDF】発表
・森永製菓株式会社 公式サイト