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リコピンが腎臓のフリーラジカルの消去を早めることを確認

カゴメ株式会社(社長:西秀訓)は、国際医療福祉大学薬学部(栃木県大田原市)横山秀克准教授との共同研究で、動物試験において、リコピンの摂取が腎臓中のフリーラジカルの消去を早めることを明らかにしました。
なお、本研究内容は第63回日本酸化ストレス学会(6月24日~25日、神奈川県県民ホール)にて発表します。

■共同研究者 国際医療福祉大学 横山秀克准教授のコメント
トマトに含まれるリコピンには抗酸化作用があり、実験的に作られた腎障害を改善したという報告があります。しかし今まで、リコピンを投与した実験動物の腎臓における抗酸化能を、実験動物が生きたままの状態で観察した例はありませんでした。今回、リコピンを摂取したラットの腎臓を、ラットが生きたままの状態でESR(Electron Spin Resonance;電子スピン共鳴)装置を用いて計測することにより、はじめてリコピン投与が腎臓の抗酸化能を亢進(こうしん)させることを明らかにできました。この結果は、リコピン摂取が腎障害予防効果をもたらすことへの期待につながります。

■研究の背景
腎臓は、血中の様々な物質を濾過、再吸収する役割を担っている臓器です。毒物や薬物などあらゆる物質が腎臓を通過していきますが、それらの物質により多量のフリーラジカルが産生され、腎臓に障害を与えると考えられています。したがって、腎臓で過剰に発生するフリーラジカルを消去することは、腎障害を予防する効果が期待できると考えられます。
これまでに、トマトに含まれるリコピンの摂取は、過剰な薬物投与によって発生する腎障害を予防することが動物試験で確認されています。しかしながら、フリーラジカルを直接分析することは非常に困難であることから、この予防効果は、リコピン摂取により腎臓中のフリーラジカルが減少したために生じたものなのか、フリーラジカルの消去以外の別のメカニズムを介して起きたものなのかは明らかになっておりませんでした。
そこで本研究では、フリーラジカルを直接測定可能なESR装置を用いることで、腎臓中のフリーラジカルの量を測定し、リコピンの摂取が腎臓のフリーラジカルの消去に与える影響について検討しました。

■研究概要
≪目的≫
本研究では、リコピンの摂取が腎臓のフリーラジカルの消去に与える影響を明らかにする目的で、リコピンを含む飼料もしくはリコピンを含まない飼料を摂取させたラットの腎臓中のフリーラジカルをESR装置により直接分析しました。

≪試験の方法≫
ラットを2群(n=8)にわけ、それぞれリコピンを含む飼料もしくはリコピンを含まない飼料(通常飼料)を2週間摂取させました。その後、背部切開により腎臓を露出させ、尾静脈よりフリーラジカルの1種であるテンポールを注入しました。注入後、17秒後から60秒後まで約5秒おきに、腎臓に置いた表面コイル型共振器よりラジオ波を照射することによりESR計測を行い、腎臓中のテンポール信号強度の変化をモニターしました。そして、テンポール信号強度が半分に減少するまでの時間(半減期)を算出しました。

≪結果とまとめ≫
図は各群のテンポール半減期を示しています。テンポール半減期は、通常試料を摂取させた群(通常飼料群)に対して、リコピンを含む飼料を摂取させた群(リコピン飼料群)では有意に低下し、腎臓におけるテンポールの消去速度が早いことが示されました。
以上より、リコピンの摂取は、腎臓のフリーラジカルをより素早く消去するため、フリーラジカルが原因である腎障害の予防に有効であることが期待できます。

■用語の説明
リコピン:
カロテノイドの一つで、トマトに多く含まれる赤い色素。カロテノイドの中でも優れた抗酸化作用を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用が期待されています。脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。

フリーラジカル:
不対電子を持つ原子や分子などの総称で、他の物質から電子を奪って酸化を促すため、生体内の様々な組織へ障害を与えます。活性酸素の一部はフリーラジカルです。

ESR(電子スピン共鳴):
フリーラジカルを特異的に検出可能な唯一の分析法として知られています。フリーラジカルが持つ不対電子は、磁場中に置かれることでエネルギー準位が分裂します。このエネルギー差分に相当する電磁波(マイクロ波またはラジオ波)を照射すると、電磁波の吸収が起こります。ESR装置では、この電磁波の吸収を測定することでフリーラジカルを検出します。表面コイル型共振器はESR計測のために実験動物の局所にラジオ波を照射するための装置です。

【資料】 学会発表の要旨
リコピンを経口投与したラットの腎臓における還元能のin vivo ESR法による評価

○横山秀克1、樗木隆聡2、吉田和敬3、相澤宏一3、松本岳3、稲熊隆博3
1国際医療福祉大学薬学部、2国際医療福祉大学病院、3カゴメ株式会社総合研究所

トマトには優れた抗酸化作用を有するリコピンが含まれており、リコピン摂取が薬剤誘起性腎障害を抑制するという報告がなされているが、リコピン投与後の腎臓における抗酸化能(すなわち還元能)をin vivoで観測した例はない。そこで、本研究では、ラットにリコピンを経口投与し、ラットの腎臓におけるin vivo還元能をESR法で評価した。還元能の評価は、ニトロキシドラジカルを静脈内投与した後の腎臓におけるESR信号強度の経時的変化により行った。リコピンの投与は、トマトオレオレジンから精製したリコピン(純度90%以上)を250mg/100g飼料の割合で混合し固形化したものを、2週間自由摂取させることにより行った。その後、ネンブタール麻酔下でラットの背部を切開することにより露出させた腎臓に表面コイル型共振器(SCR)を接触させた状態で、ニトロキシドラジカルを尾静脈より投与し、ESR計測を40秒間にわたり経時的に5秒ごとに繰り返した。SCRは一回巻きコイルと並行線路から構成され、前者がインダクタンスを後者がキャパシタンスを与えるLC共振回路(共振周波数700MHz)であり、一回巻きコイル近傍に限定された局所(本研究の場合腎臓)のESRを観測でき、他の部位の影響を受けない。ESR計測の結果、リコピン投与を受けたラットの腎臓におけるESR信号減衰の半減期が有意に短縮していることが観察された。これは、リコピン投与が腎臓の還元能を亢進させることを示唆する初めてのin vivo所見と言える。

2010年06月21日 17:59

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