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軟骨膜細胞の骨・軟骨への分化が決められることを発見/東京大学

1.発表者:
北條 宏徳(東京大学大学院医学系研究科、日本学術振興会 特別研究員)
大庭 伸介(東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 特任准教授)
鄭 雄一(東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 教授)

2.発表のポイント:
◆培養下で軟骨膜を骨に誘導する新規器官培養系を開発し、BMPが、ヘッジホッグ(注1)経路活性時には骨の形成を、ヘッジホッグ経路不活性時には軟骨の形成を促進することを明らかにした。
◆ヘッジホッグ経路の下流では、転写因子Gli1がBMPによる軟骨細胞の分化促進作用を抑制することを明らかにした。
◆一細胞定量的PCR法を駆使することで、軟骨膜には骨芽細胞や軟骨細胞に分化し得る様々な細胞集団が存在し、ヘッジホッグへの応答性も異なることを明らかにした。
◆ヘッジホッグ、BMPによる骨・軟骨分化決定の制御メカニズムの一端が明らかとなったことで、軟骨膜細胞を標的とした再生医療法を開発する際の足がかりとなることが期待される。

3.発表概要:
体の中には複数の細胞に分化することができる前駆細胞が存在します。軟骨組織を覆う軟骨膜には、胎児の骨格が形成される過程において、骨と軟骨の両方に分化できる前駆細胞が存在し、将来の骨形成に寄与すると考えられています。発生学的には、軟骨膜細胞は骨組織の細胞源となるだけでなく、特定の遺伝子が働かなくなると軟骨組織を形成することが知られています。これら軟骨膜細胞の分化決定にはヘッジホッグ(注1)やBMP(Bone Morphogenetic Protein、骨形成性タンパク質)(注2)など、様々な因子により制御されていることはわかっていますが、その制御機構は完全には解明されていません。

東京大学大学院医学系研究科の北條宏徳特別研究員(現 南カリフォルニア大学Broad-CIRMセンター所属)、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授、鄭雄一教授らは、日立製作所の神原秀記フェローやミシガン大学の三品裕司准教授らのグループと共同で、ヘッジホッグとBMPの相互作用が軟骨膜における骨・軟骨前駆細胞の分化運命決定の制御機構に関わることを解明しました。本研究が、ヘッジホッグやBMP等を利用した骨や軟骨の再生療法を開発する際の足がかりとなることが期待されます。

用語解説:
(注1)ヘッジホッグ:
細胞から分泌されるタンパク質ファミリーの一つで、細胞の運命決定や器官形成および個体発生において重要な役割を果たしている。脊椎動物では,ソニックヘッジホッグ、デザートヘッジホッグ、およびインディアンヘッジホッグの3つが存在する。ヘッジホッグタンパク質を受け取った細胞では、細胞内の特定のシグナル経路が活性化されて、標的遺伝子が転写される。
(注2)BMP(Bone Morphogenetic Protein、骨形成性タンパク質):
細胞から分泌されるタンパク質ファミリーの一つで、皮下に埋入された脱灰骨が異所性に軟骨内骨化を引き起こすことから命名され、現在までに20種類以上同定されている。

【お問合せ】
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻
特任准教授 大庭 伸介
南カリフォルニア大学 Keck医科大学Broad-CIRMセンターMcMahon研究室
日本学術振興会 特別研究員
北條 宏徳

※詳細は下記URLをご参照ください

◎東京大学 2013年4月1日発表
https://news.e-expo.net/pdf/2013/04/20130401u-tokyoac.pdf

2013年04月02日 12:24

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