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アトピー性皮膚炎の発症に関わる4つのゲノム領域を新たに発見/理化学研究所

理化学研究所は、アトピー性皮膚炎の発症に関連する4つのゲノム領域を新たに発見しました。これは、理研統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、呼吸器・アレルギー疾患研究チームの玉利真由美チームリーダー、広田朝光研究員を含む国際共同研究グループ※[1]による成果です。

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性的な湿疹が特徴の疾患で、患者さんの多くはアトピー体質という遺伝要因を持っています。セーター、髪の毛、汗など、ちょっとした刺激にも敏感で、かゆみから皮膚を引っかき壊してしまうことが多いのも特徴です。専門家による治療ガイドラインの普及により、症状をコントロールできるようになりましたが、治療による効果が少ない難治性の症例も存在し、病態の解明や治療法の確立が急務となっています。

今回の研究では、まず欧州の研究チームが、免疫関連疾患を詳細に解析するための「イムノチップ解析法[2]」を用いて、欧州人集団(アトピー性皮膚炎患者4,376人、非患者10,048人)のアトピー性皮膚炎の遺伝要因の探索を行いました。その結果、新たに4つのアトピー性皮膚炎に関連するゲノム領域(4q27、11p13、16p13.13、17q21.32)を発見しました。次に理研の研究チームが、その結果の検証を日本人集団(アトピー性皮膚炎患者2,397人、非患者7,937人)で行ったところ、4つの関連ゲノム領域のうち3つの領域(11p13、16p13.13、17q21.32)が日本人のアトピー性皮膚炎発症にも関連することを確認しました。

発見した4つのゲノム領域とその近くの領域には、免疫応答に関与する遺伝子や自然免疫と獲得免疫を制御するタンパク質、抗体遺伝子の再構成に重要な働きをする遺伝子のほか、かゆみに関わる神経成長因子受容体が存在していました。これは、発見された遺伝要因がそれらの遺伝子発現量に影響する可能性を示唆しています。

今回の知見は、今後の臨床研究の仮説立案や治療標的分子の絞り込みに役立つと期待できます。

本研究成果は、科学雑誌『Nature Genetics』に掲載されるに先立ち、オンライン版(6月2日付け)に掲載されました。

※[1]国際共同研究グループ
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノムシークエンス解析分野(中村祐輔教授)、理化学研究所統合生命医科学研究センター(久保充明副センター長、高橋篤チームリーダー)、クリスチャン・アルブレヒト・キール大学(David Ellinghaus、Heidi Schaarschmidt、Stefan Schreiber、Andre Franke)、シュレスヴイッヒ・ホルシュタイン大学病院(Hansjörg Baurecht、Elke Rodríguez、Ulf Meyer-Hoffert、Melanie Hotze、Regina Fölster-Holst、Stephan Weidinger)、マックス・デルブリュック分子医学センター(Jorge Esparza-Gordillo、Anja Matanovic、Ingo Marenholz、Norbert Hübner、Young-Ae Lee)などからなる研究グループ。

【お問合せ】
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独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel:048-467-9272 / Fax:048-462-4715

※詳細は下記URLをご参照ください

◎独立行政法人理化学研究所 2013年6月11日発表
http://www.riken.go.jp/pr/press/2013/20130611_2/

2013年06月12日 15:45

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