早稲田大学人間科学学術院の千葉卓哉准教授(早稲田大学人間科学学術院・早稲田大学応用脳科学研究所)、長崎大学医学部の下川功教授らのグループは、食事制限による寿命延長、抗老化作用に関して、神経細胞で発現している神経ペプチドの一つである、ニューロペプチドY(NPY)が重要な役割を持つことを明らかにしました。約80年ほど前から、ネズミに与える餌を自由に食べる量の30%程度減らす食事制限を行うと、寿命が延長することが知られていました。
これまでヒトに近い霊長類であるサルを含めて、実験動物をもちいた研究では、食事制限によってガンや生活習慣病、アルツハイマー病に似た神経疾患などの発症を抑制する、普遍的な抗老化作用が再現されてきましたが、長らくその分子メカニズムの詳細は不明のままでした。
一方、20年程前から長寿に関わる遺伝子が、線虫やショウジョウバエなどの下等生物や、マウスなどの哺乳類で報告されるようになってきました。食事制限による寿命延長、抗老化作用に関わる遺伝子についても、下等生物ではいくつか報告されてきましたが、哺乳類ではまだ不明な点が多く残されていました。今回の研究では、NPYを持たない遺伝子改変マウスに対して食事制限を行っても、活性酸素によって誘導される酸化ストレスに対する抵抗性が高まらず、結果として寿命延長が見られないことが明らかとなりました。
寿命を調べたマウスの死因を解析したところ、NPYを持たないマウスでは、食事制限を行っても腫瘍の発生頻度が高く、このことがこのマウスの寿命と関連していることが示唆されました。NPYは摂食行動を促すホルモンの一種ですが、NPYを持たないマウスでは摂食行動やエネルギー代謝に明らかな異常は見られませんでした。しかしながら、食事制限の寿命延長、抗老化作用には、NPYが必須の因子であることが示唆されました。
※詳細は下記URLをご参照ください
◎早稲田大学 2014年4月1日発表
http://www.waseda.jp/jp/news14/140401_npy.html