森永製菓株式会社は、1997 年よりココアの機能性について研究を重ね「冷え性抑制効果」、「抗インフルエンザウイルス効果」など様々な研究結果の発表を行っています。
今回は研究をすすめ、特に高齢化社会向けた取り組みとして『ココア摂取による便通便臭改善効果』を確認し、その結果について 11月 25・26 日に東京で行われる日本食物繊維学会第22 回学術集会で発表する。
■研究の背景・目的と概要
【便秘に悩む日本人】
わが国では便秘を訴える人は年を追うごとに増加し、厚生労働省の調査(2014 年国民健康・栄養調査)によれば、人口千人あたりにすると男性 26.0 人、女性 48.7 人となっています。特に、20 歳から 60 歳では女性が圧倒的に多いのが特徴で、便秘による女性の QOL(Quality of Life)低下が問題化しています。また 60 歳代以上では、男女ともに年齢が上がるにつれて便秘を訴える人が増加します。近年の人口高齢化に伴い便秘を訴える人は確実に増加することが予想され、便秘が高齢者のQOLを著しく低下させる一因として危惧されています。
【不足する食物繊維】
習慣性の便秘には食物繊維の摂取不足が大きく関与していると言われています。平成 26 年国民健康・栄養調査によれば、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあり、2014 年は成人女性が 14.4g で目標摂取量(女性:18g、男性:20g 2015 年日本人の食事摂取基準より)から 3.6g の不足、成人男性が 15.1g で 4.9g の不足です。さらに水溶性食物繊維と不溶性食物繊維について見てみると、2001 年から 2014 年までの間に水溶性食物繊維の成人での摂取量は 3.5g から 3.4g とほとんど変化はないが、不溶性食物繊維は 11.6g から 10.8gと減少量が大きく、特に女性の方がその減少量は顕著であり不溶性食物繊維の不足が懸念されています。
【介護の現状】
2015 年度 介護保険事業状況報告(年報)によると、要介護(要支援)認定者数は、2016 年 3 月末現在で620 万人と前年度に比べ 15 万人増(2.3%増)と年々増え続けています。そんな中で、悩みの一つになっているのが排泄介助です。家庭内の介護や施設で看護のおいても、“便の臭いが少なくなる”だけでも精神的負担が減ることから、便臭の低下は望まれています。
ココアの便通改善については、既に『ココアに含まれる豊富な食物繊維による便秘の改善』も報告されていますが、臨床試験としての報告は少ないのが現状です。さらにココアによる便臭改善については、機器分析による客観的な報告はほとんどありません。そこで今回、森永製菓では便通および便臭改善に関与する成分としてココアの中で最も多く含まれる不溶性食物繊維のひとつである「カカオ由来のリグニン」に着目し、ココア飲料を用いたヒト介入試験を実施しました。その結果、便通および便臭改善が確認できましたので、以下に報告します。
■試験内容■
ココア 10g(リグニン含量 1.5g)に飲みやすくするため砂糖を加えた被験食品と、対照食品として外観,容量,色等からは区別ができないように調整し同量の砂糖を加えたココア風味食品を作製しました。20 歳から 60 歳の健康な男女で便秘傾向の 22 人の被験者を無作為に 2 群に分け、それぞれ 2 週間ずつ被験食品または対照食品を摂取するクロスオーバー試験を行いました。ウォッシュアウト期間(治験開始の前に、被験者が服用・飲食していた薬・食品の投与をやめる期間)は 2 週間としました。評価項目は、アンケートによる評価(排便回数、排便量、便性状、便臭)および機器分析による評価(糞便中のアンモニア、インドール、スカトール濃度の定量)を第 1 期摂取開始前、第 1 期介入終了後、第 2 期摂取開始前、第 2 期介入終了後の計 4 回実施しました。
■試験結果:改善方向に有意差が見られた結果■
【ココアを 2 週間継続して摂取すると、便秘で悩んでいる方の排便回数が増加しました】
1 日ごとの排便回数を記録し、被験食品(ココア 10g)と対照食品について摂取開始前期間の平均値と、摂取後の平均値を比較しました。摂取 2 週間の排便回数の合計は、ココア摂取時で「開始前が 8.4 士 0.6 回、摂取期が 9.3 士 0.7 回」でした。対照食品摂取時では、「開始前が 8.2 士 0.5 回、摂取期が 8.1 土 0.6 回」でした。統計解析の結果、対照食品との食品間比較において、ココア摂取期に排便回数が増加し有意差(P=0.015 )が認められました。(図 1)
【ココアを 2 週間継続して摂取すると、排便の臭いが軽減しました】
排便の気になるニオイ・糞便中のアンモニア量を、ココア摂取開始前と摂取後でイオンクロマトグラフィーを用い分析、比較しました。糞便中のアンモニアの変化量は、ココア摂取時では-0.19 士 0.05mg/g と減少、対照食品摂取時では 0.10士 0.06mg/g と増加しました。統計解析の結果、食品間比較においてアンモニア濃度減少の有意差(P=0.001)が認められました。(図2)※その他の評価項目では、一部改善の傾向があるものもありましたが、有意差が見られませんでした。
これらの改善効果に関与する成分としてはココアに最も多く含まれる不溶性食物繊維であるカカオリグニンの関与が高いと考えています。 今後も、森永製菓は、企業理念である「おいしく、たのしく、すこやかに」のもと、ココアの機能性の研究や健康寿命延長のための研究を継続します。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・森永製菓株式会社 2017年11月6日発表
・森永製菓株式会社 公式サイト