株式会社シーボン(以下シーボン.)は、東京工科大学応用生物学部先端化粧品コースの正木仁教授と共同研究を行い、α-ヒドロキシ酸(AHAs)の一種である“乳酸”が皮膚保湿機能に及ぼす効果について、新たなメカニズムを発見しました。なお同研究結果は、2020年6月12日(金)に、第45回日本香粧品学会の香粧品学会会員専用サイトにて情報公開されています。
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■ 研究の背景・目的
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“乳酸”は天然保湿因子(NMF)の構成成分の一つであり、一般的には汗により供給されると考えられています。一方“乳酸”は、美容皮膚科領域、及びスキンケア化粧品においては、α-ヒドロキシ酸に分類される低級脂肪酸で、角層のピーリング効果を期待して広く使用されております。しかしながら、“乳酸”の皮膚生理に対する作用については未だ多くの不明点もあります。そこで、“乳酸”の皮膚に対する機能性についての研究を行いました。
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■ 研究結果
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*評価方法は下記参照
●表皮の角層水分量が向上
前腕に乳酸水溶液を2週間連用し、角層水分量と経表皮水分蒸散量を測定し、角層の保湿状態を表す角層パラメーター※1を評価しました。その結果、“乳酸”による角層水分量の増加と、角層パラメーターの改善が確認されました。
●表皮角化細胞の保湿関連因子の発現量が上昇
正常ヒト表皮角化細胞へ“乳酸”を作用させた時の表皮分化、保湿関連因子の遺伝子発現解析を行いました。その結果、“乳酸”を24時間作用させることで、天然保湿因子(NMF)の素となるフィラグリン(FLG) ※2とフィラグリンの分解に関わるカスパーゼ14(Casp14)※3、ケラチンパターン形成に関与するケラチン10(KRT10)※4の遺伝子発現量が増加しました。さらに、再生ヒト表皮モデル※5に“乳酸”を任意の濃度で継続して添加することにより、フィラグリンタンパク質の発現量の増加が確認できました。
同研究結果から、“乳酸”はピーリング効果のみならず、表皮内部からの保湿関連タンパク質の発現量を上昇させることにより、角層の水分量を向上させることが示唆され、 “乳酸”が含まれている化粧品の有用性を明らかにしました。
同社では、“乳酸”による皮膚保湿機能に及ぼす影響を確認し、スキンケア化粧品へ応用しています。同研究を通じて、今後も独自のビューティ・プログラム「ホームケア+サロンケア」を展開する化粧品メーカーとして、より革新的なスキンケア製品の開発に努めます。
※1 角層パラメーター・・・角層水分量を経表皮水分蒸散量の比 角層の状態の指標となる
※2 フィラグリン(FLG) ・・・表皮の顆粒細胞で産生されるタンパク質 角層細胞中のケラチン線維を凝集させることで、 角層のバリアを強固にする働きを持ち、また一部はアミノ酸まで分解されNMF(保湿因子)の素となる
※3 カスパーゼ14(Casp14)・・・フィラグリンをアミノ酸に分解する酵素で、バリア機能や保湿機能に重要な働きをもつ
※4 ケラチン10(KRT10)・・・角層細胞の主要な構成成分で、細胞構造を強固にすることによりバリア機能の役割を果たす フィラグリン(FLG)の働きにより凝集することでケラチンパターンという配列を形成する
※5 再生ヒト表皮モデル・・・三次元構造を有する人工皮膚モデルで、皮膚に対する安全性や有効性などの評価に広く使用される
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■ 評価方法
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●表皮の角層水分量の測定(in vivo /生体内)
8名の女性(24~51歳)の前腕内部に乳酸水溶液を2週間(1日2回)連用。
角層水分量、経表皮水分蒸散量を測定後、角層パラメーター(水分量/経表皮水分蒸散量)を算出。
●表皮分化、保湿関連因子の解析(in vitro /試験管内)
1)正常ヒト表皮角化細胞へ乳酸を作用させた時の表皮分化、保湿関連因子をリアルタイムPCR※6を用いて遺伝子の発現を解析。
2)再生ヒト表皮モデルに“乳酸”を任意の濃度で、48時間連続、または、1日2時間ずつ、7日間継続して添加。それによる保湿関連タンパク質の発現量を免疫蛍光染色※7によって確認。
※6 リアルタイムPCR・・・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅をリアルタイムに測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの定量を行う
※7 免疫蛍光染色・・・抗原抗体反応を用いた染色方法で、目的タンパク質の局在、及び発現強度を蛍光強度にて確認する方法
※8 2020年6月24日時点
【詳細は下記URL(PDF)をご参照ください】
・株式会社シーボン 2020年6月24日【PDF】発表
・株式会社シーボン 公式サイト