2008年終盤にボッ発したサブプライムローン問題に端を発した金融不安の本格化とともに迎えた2009年。オバマ大統領就任、政権交代など、不安定な情勢の中で新しい動きが目立った1年を「健康美容ニュース」で振り返る。
【新型インフルエンザ猛威で関連商品続々】
厳重な警戒体制の中、5月に国内初感染が確認され、新型インフルエンザに対する不安は加速度的に増大。薬局やドラッグストアなどでは、マスクや対策グッズが姿を消した。健康美容業界では対策グッズが続々登場。マスクでは、“プロ仕様”、ウイルスを99.9999%不活性化するもの、など各社が増産する中、プラスαの高機能マスクの投入が目立った。消毒用アルコールでは、スプレータイプ、ジェルタイプなどさまざまなものが発売され、マスクと並び予防グッズの定位置を確保した。その他、和漢の素材を配合した予防サプリメント、また、新型インフルエンザに対応した素材として、コロカリアも注目を集めた。
【市場環境は“規制強化”の方向へ】
業界に「特需」をもたらした新型インフルエンザだが、一方でアゲインストをもたらす「新」もあった。6月の改正薬事法完全施行にともない、省令によりネットでの医薬品(第一類、第二類)販売が規制された。これまで許されていたことが、覆されたとあって、ネット通販各社は“規制強化だ”と猛反発。なかでもケンコーコムは、国を相手に法廷闘争を挑んだ。4度に渡る口頭弁論は12月24日に結審し、判決は2010年3月30日に下される。9月には消費者庁が発足。消費者保護の風潮が一層強まり、前後して、摘発される業者が相次いだ。そうした中で、トクホを取得したエコナに発がん性物質が含有しているとして、一時販売自粛を発表。その後、トクホの許可失効にまで発展する騒動がボッ発した。
【国内市場飽和背景に海外展開加速】
広がる金融不安の中で、市場が萎縮する中、新たな市場拡大の動きも目立った。2009年を“グローバル化元年”と位置づけたファンケルは、8月25日、アジア戦略強化に向けた資本・業務提携を発表。まずはアジア市場を抑え、ファンケルブランドの世界規模の認知向上を目指すとした。DHCも11月、アジア最大のドラッグストアチェーンと代理店契約を締結したことを発表、初のシンガポール進出を果たす。ケンコーコムも設立9年半にして、ついに海外進出。シンガポールを拠点とした子会社を設立し、12月24日から世界約30ヶ国からの受注を開始した。
【メンズコスメが飛躍】
じわじわと広がっていたメンズコスメが、大きく飛躍した1年でもあった。男性用化粧品「ウーノ」から8月に新発売された霧状のスタイリング剤「フォグバー」はこれまでのスタイリングの常識を覆すスタイルとして受け入れられ、大ヒット。毎年発表されるトレンド雑誌のヒットランキングでもベスト10入りを果たした。フィッツコーポレーションは、メンズ香水の新ラインナップ開発にあたり、プロデューサーとして新庄剛志を起用。各方面から注目を集めた。
【コスメ業界も低価格化が進行】
3桁ジーンズなど、アパレル業界に拡大する激安定価品の波が、コスメ業界にも波及した。ハイム化粧品は9月、ワンコインコスメ(500円=税抜き)の発売を開始。もともと低価格の商品展開で知られていたが、人気ナンバーワン製品の思い切った価格設定で市場にインパクトをあえた。トーマスインターナショナルは12月、プロ用のカラージェルをリニューアル。相場の3割から4割以上安の価格設定とし、今後もランナップを拡大していくと表明した。いずれも低価格、高品質を標榜し、業界に一石を投じる意気込みを示している。
【総括】
市場、ターゲット、価格…など、2009年はあらゆるものが飽和し、従来の価値観やモノサシでの戦略立案が無意味であることが浮き彫りとなった。その結果が、海外であり、メンズであり、ワンコインコスメへ反映されたといえる。閉塞感が漂う中、動かざる得ず動いた感が強いが、着実に地殻変動は起こった。
2010年も引き続き、厳しい状況が続きそうだが、健康食品業界では、日本健康・栄養食品協会が業界の盟主としてのリーダーシップを発揮すべく改革の基本方針を打ち出すなど、明るい光が差し込みつつある。
「浄化」「効率化」「柔軟性」。厳しい中で、訪れた商機を着実にものにする体制確保が、サバイバルの様相が一層激化する2010年を生き抜くキーワードとなりそうだ。